Delight of reunion
・無神家長女で幼少期シュウと友達だった(ユーマがエドガーだった頃一緒に村で暮らしていた)シュウと再会する。
※夢主は学生ではない設定にしてます。
ルキにコウ、ユーマにアズサが学校に行っている間、私は暇だ。家で本を読んだりユーマがいない間の菜園への水やりをしたり部屋の掃除が終わると私は手持ちぶさたである。……と、思いきや。アズサの部屋の机の上には授業で使われるだろうと思うプリントが置いたままになっていた。
「これ、いるよね?」
プリント持っていくついでに学校を見学したいなぁ、なんて思いながら私はファイルにプリントを挟んでカバンに入れた。元栓のチェックをし、電気も確認した私は玄関の鍵を掛けた。
そして使い魔に頼んで車を出してもらう。
数十分もすれば学校らしき建物が見えてきた。なんか楽しみ。一度、学校に行ってみたかったから。高校に行くには年が上すぎるし、かと言って大学に行けるほどの学はないからなぁ。
車が校門の前に止まって私は車から降りた。『嶺帝学院高校』 確か英国に本校があるんだっけ……。それにしても大きいな。私は校庭に足を踏み出した。
事務員を見つけたので事情を説明するとすんなり校舎に入れてくれた。
アズサのクラスも教えてもらい、私は教室を目指す。木造の校舎に借りたスリッパの音が響く。
それにしても、夜間学校って楽しそう。朝に起きても、活動時間が夜になってしまったからだろうな。
「〜♪」
鼻歌を歌っていたら足元に何か当たった気がした。
「って、えっ!?」
人……、だよね?
そこには廊下の壁に背を預けて眠っている男子生徒がいた。金髪でブレザーを羽織って、イヤホンをした人。
……金髪って、なんかあの子思い出すんだよね。ユーマ……、じゃなくてエドガーと私と友達だった男の子。
「……あの、ごめんなさい」
「……」
寝ていた男子生徒はゆっくりと目を開けてこちらを見た。なんだかその瞳に見覚えがある。
「なに、あんた」
「足を蹴ったから謝ったんだけど」
でも、ちょっと違う。あの子の雰囲気とはかけ離れている。
「はぁ……」
「じゃあ、私行くね」
「!? 待て」
私が歩いていこうとすると、いきなり彼が私の袖を掴んだ。
「?」
「あんた名前は」
「ユリア、無神ユリアだよ」
どうして彼は私の名前を聞いたのだろう。
「無神? ……いや、でも」
「君の名前は?」
「なあ、あんた。火事にあったことあるか?」
私の質問を無視した彼は問いかけてくる。火事……か、エドガーが大火傷を負って記憶まで失ったのに私は無傷だった。それはエドガーが庇ってくれたからだ。
「……ある、けど」
「エドガー」
どうして彼がその名前を知っているのだろう。
「……君は、シュウなの?」
知っているのは私と、あの子。『シュウ』だけだ。
「やっぱりユリアか」
「シュウ、なんだね」
「ああ」
彼は村が焼けた後、どうしているのだろうかなんて考えるのも忘れていた。それほど長い年月が経っていたのだ。
でも、シュウのことは忘れたことなんてなかった。エドガーが忘れたかわりに私は覚えている。彼と過ごした時間は今もまだ鮮明に思い出せる。
「会いたかった」
「俺も」
「私、……っう」
シュウに抱きつけば優しく抱きしめ返してくれた。涙が溢れてきて止まらない。
「泣くなよ」
「だってぇ、ひっく……」
「俺はここにいる」
見上げればあのときと同じように微笑むシュウがいた。
それが嬉しくて、私はまた泣くのだった。
(所で、何でこんなとこにいるんだ?)
(あっ、私アズサにプリント渡しに来たんだった!!)
(……もう終わってるんじゃない?)
(うぅ……、せっかく持ってきたのに)
(てか、あんた学校通ってないの?)
(私、20歳だから)
(あっそ……(ある意味年上だった……))
@@後書き@@
・実は年上という夢主。それでもヴァンパイア換算だったらシュウよりは年下になる……のか?
・企画リクエスト数の都合上、続編を書くことが出来ずに申し訳ないです(^^;)。
・設定として付け足すなら、夢主はカールハインツに何も聞かされておらず、計画にも参加していない。ただ無神兄弟のお世話役になってるだけみたいな感じ。
・カールハインツは自分の娘みたいに可愛がってるとか……。
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