Still I?
・シュウが嫌いなレイジ成り代わり主そんな主が好きなシュウ。






あいつはいつから笑わなくなっただろう。それも、俺の前で。

屋敷で顔を会わせても、あいつは俺が忌々しいみたいな顔をして何も言わずに通りすぎる。言葉を発するとしたら俺を呼ぶときの『穀潰し』くらいか……。
あいつが微笑みながら話す相手はスバルくらいだ。


小さい頃はそれなりに会話をしていたはずだった。




「おい、ユリア」

俺が話かければ、ユリアは眼鏡の奥にある紅い瞳をこちらに向けた。最近分かったことがある。ユリアが俺を見るときに少しだけ悲しそうな顔をすることだ。


「……何ですか」

渋々ながらに口を開いたユリア。


「好きだ」

「……」

そう言うと彼女は押し黙って、
そして――



「……大嫌いですよ。ずっとずっとずっと。最初から何でも持っていた貴方が、私は大嫌いです」


「貴方は分からないでしょう? 私の気持ちなんて。小さい頃、ヴァイオリンの演奏会に出ることになって、母様が聞きにきてくれると思っていたのに、母様は貴方が熱を出したせいで聞きに来なかった。長男だから仕方がないと、私は我慢していました。でも、貴方が演奏会に出た時、私が同じように熱を出しても、母様は貴方の演奏会に行ったんです。何かある度に母様は「シュウ、シュウ」と言う。私のことなんて母様にとっては貴方の次くらい……いいえ、毛ほどにも思われてなかった」

知らなかった。俺はあまりにも彼女のことを知らなさすぎた。そういえばスバルがユリアの側にいる時、彼女は泣きそうな顔をして笑っていた。嬉しそうに微笑んでいたのではなく、彼女は耐えるように笑っていたのだ。

ユリアは苦しそうに言葉を続ける。


「だから貴方の前で笑わなくなった。だから貴方の名前を呼ばなくなった。だから貴方を構う母様を殺した。だから貴方が仲良くしていた人間の住んでいた村に火を放った」

「だから」

「もう止めろ」

俺の前で笑わなくなったのも、名前を呼ばなくなったのも、彼女が母さんを殺したのも、彼女がエドガーの村に火を放ったのも、理由は全て俺だった。

ユリアがどんな思いでいたのかなんて分からない。分からないけど、辛そうな顔を見たくはない。

「大嫌い」

「ユリア」

「私は貴方が大嫌いです」



冷たい表情のまま彼女は、さっきの言葉で立ちすくんだ俺の横を通りすぎた。


「……それでも、俺は」


その先に続く言葉は、誰にも届くことなく消えた。








@@後書き@@
・予想以上にシリアスになった…。
・ちっちゃい頃はそれなりに仲良かったけど演奏会の一件で完全に我慢の限界が来た夢主。
・一人で泣いてるとこをショタスバルが偶然通りかかり、それ以来スバルは夢主の側にだけずっと居るという裏話。


prev mokuji next

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -