アズサ成り代わり1
私は『DIABOLIC LOVERS』のキャラに成り代わったらしい。
それの続編である『MORE BLOOD』から登場した無神兄弟の一人。あの自傷癖をもった末っ子に私は成り代わっていた。ただ違うのは、性別。
そう。無神アズサでありながら、私は女の子として成り代わったのだ。女体化? おいしいじゃないか。残念なのは中身が私という所だろう。
そして成り代わったと言っても、私は彼のように自傷をするわけではない。それなのに、それなのに何故?
「……あれ、怪我?」
気付いたら怪我をしている私がいた。
絶賛、包帯とお友達、できた傷ともお友達状態だ。
この姿になってから、私の口調はゆっくりになったことにも慣れてしまった。
「ユリア」
あ、長男が現れた。無神兄弟の長男、参謀系ドSのルキだ。私が怪我をすると何故か彼はすぐにやって来る。
「……ルキ、あの」
ああ、歯痒い。喋るのが遅すぎる。
「またやったのか」
怖い。彼は怒っている。しかしその怒りは理不尽なもの。
私は自分から傷つけたわけじゃない。それなのにルキは怒るのだ。
「……自分でしたんじゃない、……から」
弁明を試みるものの、如何せん喋るのが遅すぎた。これではただ言い訳を言っているだけになる。
「ユリア」
「はいはーい、ルキくんストップ!!」
「コウ」
あ、黄瀬……じゃなかった。次男のコウだ。ルキの注意を私から彼自身に移すことで一先ずルキの説教は中断された。
「ユリアちゃんは自分でやってないんでしょ?」
「……うん」
「ほーら、ルキくんてば決めつけちゃダメだよ。いくらユリアちゃんができた傷に名前付けてるからって」
ちょっと待て。何でコウが知ってるんだ。私がジャスティンやクリスティーナやメリッサと友達だと言った覚えはないはずだ。おそるべしアイドル。
「はぁ……。怒っているわけではない。俺はユリアがこれ以上傷つくのが許せないだけだ」
「……怒ってる」
「ユリアちゃん怖がってんじゃんか」
「何故だ」
そして二人は私を取り残して言い合いを始めるのがいつものことだ。さて、ここでお気づきだろうか。お二人のキャラの違いに。彼らには私に対してドSのドの字もない(ルキは怒る時に発揮する)。兄弟だからなのかもしれないが、キャラの違和感に私は最初、戸惑った。今はもう慣れたが。
「……二人とも、……ちょっと」
「おーい、ユリア。ってまたかよ」
リビングに入ってきたユーマは私に声をかけた。今まで菜園にいたのであろう、かすかに土の匂いと緑の匂いがする。
「……また、……怪我した、から」
「つーかよ、言い合いする前に手当てしてやるのが先だろうが」
「「!?」」
あ、ユーマの一言で二人の言い合いが止まった。そう言えば、彼らに話しかけられて怪我を手当てするのを忘れていた。
「コウ、救急箱だ」
「分かってる!!」
そこからの二人の連携は速かった。
「よーし、できた」
「ああ、痛々しいな」
コウに包帯を巻かれてルキにそう言われるのは何回目だろう。
「っとに、お前いつの間にか怪我すんのな」
ユーマは私の頭を撫でている。お兄ちゃんか、と突っ込みたかったが、実際に(血のつながりはないけど)兄だったことを思い出して止めた。
「……ルキ、コウ。……ありがとう、ユーマも」
「「「ああ/うん/おう」」」
三人とも、いいお声をしていらっしゃる。
「……怪我、は、もうしない……から」
まぁ、多分守れない約束だけど。
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