クリスタ成り代わり1

出会い編


思えば、それは私の初恋だった。


「お兄様」

「どうしたんだい? ユリア」

庭園の薔薇を見ながら歩いている私達は昔と変わらない。変わったのは私がお兄様に、カールハインツ様に恋心を抱いていること。幼い頃から私は彼と一緒にいた気がする。本当の兄妹ではないけれど、血縁者であった私はカールハインツ様と何度か交流があった。

「いえ……、やっぱり良いです」

「それは気になるな」

私が口を噤むのには理由がある。
それは私に縁談が来ていることだ。これがお兄様だったらどんなに良かっただろう。しかし現実は残酷である。望まぬ結婚などしたくない。叶うならば、私はお兄様と――

「ユリア、顔色が悪いようだが、大丈夫かい?」

その言葉にハッとして自分がうつむき、暗い顔をしていたことに気付いた。

「大丈夫です。お兄様、今年も綺麗に咲きましたね」

心配させないように私は笑顔を取り繕い、話を反らした。
庭園には沢山の薔薇が育てられており、二人が今いる場所には白い薔薇が咲き誇っていた。そう言えば、私が社交界で白薔薇と呼ばれるようになったのはいつからだろうか。

「……ああ、そうだね。だが」

「?」

「お前のほうがこの薔薇より何倍も美しい」

お兄様は一輪だけ手折ると私の髪にその薔薇を挿した。

「……っ」

その言葉に私はカアッと火照ってしまう。叶うはずのないこの想いも報われるのではないかと錯覚してしまいそうだった。




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