Silver wolf and small girl
スバル成り代わり
※幼少期主 と狼時カルラ
小さい頃にカルラと出会っていたらという設定です。シンもいます。






――これはこれは昔のお話。
小さな小さな白いヴァンパイアと銀色の狼のお話です。



あるところに小さな可愛らしい真っ白な髪をもつヴァンパイアの子どもがいました。
その子どもの名前はユリア。
元気な笑顔の可愛い女の子です。
ユリアは大きな屋敷に住んでいて、その近くにある森に、いつも遊びに来ていました。森の動物たちはユリアが大好きです。ユリアも彼らが大好きでした。ユリアが森に行くと、歓迎して集まってくるのですが、今日だけは様子が違いました。森はなんだか生気を無くしたように静かです。
途中で、隠れて震えるウサギを見つけたユリアは聞きました。

「何かあったの?」

すると、ウサギは小さく鳴きました。
動物たちの言葉が分かるユリアはウサギから『森にオオカミがいる』ということを知りました。

「オオカミ……、どうしたんだろう」

この森にオオカミがいたことは無かったはずです。ユリアは震えるウサギを撫でて落ち着かせると、巣穴に帰るように言いました。

森の奥へ進むと、感じたことのない気配がしました。
ガサリと草木をかき分けてみると、そこには傷ついたオオカミがいました。どうやら足を怪我しているようです。
ユリアに気づいたオオカミは唸りを上げました。しかし、それも苦しそうにしています。

「大丈夫……、わたしはあなたを傷つけたりしないよ」

ユリアはそう言って近づこうとしますが、オオカミは警戒して鋭い牙を剥き出しました。

「こわくない、こわくないよ。……わたしはあなたの怪我をみたいだけなの」

心配そうな顔をしたユリアはオオカミにそう言います。

「わたしがあなたを助けてあげる」

怯むことなく近づくユリアにオオカミは剥き出した牙をもとに戻して、小さく唸ります。

「いいの? ありがとう」

どうやらオオカミはユリアに怪我を見せることを選んだようでした。

「足を怪我しちゃったんだね……、痛かったよね」

まるで自分のことのようにオオカミを労る姿が、彼にも伝わったのでしょうか。彼はユリアに撫でられると目を細めました。
彼女は傷によく効く薬草を見つけてオオカミの足に巻きました。そして自分の持っていたお気に入りの白い薔薇の刺繍がついたハンカチをその上に巻いてあげました。
「これで大丈夫。あなたは優しいオオカミさんだね。わたしにあなたの怪我を見せてくれてありがとう」

綺麗な銀色の毛並みを、もう一度撫でると、今度はオオカミから擦り寄ってきました。

「あ、名前。わたしはユリアっていうの。あなたに名前はある?」

ユリアはオオカミにそう言って微笑みました。
それに答えて小さく唸るオオカミ。

「カルラ……か、格好いい名前だね。あなたにぴったり」

銀色のオオカミはカルラという名前のようです。
カルラは少し恥ずかしいのか、顔を背けてしまいました。

「格好よくて、きれい」

彼女がそう言ってカルラの毛並みに顔を近づけようとした時に、こちらに駆けてくる何かの音がしました。

ハッハッ、とやって来たのは茶色い毛並みのオオカミでした。どうやらオオカミは二匹いたようです。
ユリアがいるのを見て、そのオオカミは威嚇してきます。
それをカルラがユリアを庇うように体を起こして吠えました。オオカミは威嚇を止めて、恐る恐るこちらに近づきました。
「カルラと友達なの?」

ユリアはそう聞きます。
するとカルラが『弟だ』と教えてくれました。

「兄弟なんだね、……あなたの名前を教えて?」

弟のオオカミは唸って答えます。

「そう、……あなたはシンって言うんだ。わたしはユリア。カルラが怪我をしていたから手当てをしていたの」

びっくりさせてごめんね。
ユリアはシンに向かってそう言いました。

「あなたはカルラのことを大切に思ってるんだね」


シンの頭を撫でようと手を伸ばしますが、ユリアはそこで手を止めます。

「撫でても、いい? あなたの毛並みも、カルラと同じできれいだから」

撫でやすいように頭を下げたシン。

「ありがとう。あなたも優しいんだね」

グルルル……と目を細めてシンは嬉しそうに答えました。

「そっか、あなたたちは遠くから来たんだ……」

ユリアの側に座ったカルラは、彼女の膝に顎をのせており、頭を撫でると気持ち良さそうに喉を鳴らします。
「カルラの怪我が治るまではこの森にいたほうが良いよ。わたしが森の動物たちに言っておくから安心してね」





――それから何日かたったある日、カルラの怪我は完治し、カルラとシンの二匹とお別れすることになりました。


「怪我が治って良かった」

「うん。……一緒には行けないよ。わたし、お母さんが心配だから」

カルラの治った足を優しく撫でて二匹にユリアは答えます。

「いつかまた、会いにきて」

カルラとシンはユリアに一度だけ擦り寄ると彼女から離れ、森の外へと歩き出しました。途中、何度も後ろを振り返る姿にユリアは「絶対に忘れないから」と言います。そして駆け出した二匹の姿が見えなくなってしばらくすると、遠吠えが聞こえてきました。カルラとシンです。

「さよなら、……また会おうね」

ユリアは二匹の遠吠えを聞きながら微笑むのでした。








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後書きは次のおまけにまとめてします。




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