I'd like to monopolize it.


さて、今日は何をお話しましょう。
今年も綺麗に咲いた庭の薔薇の話?
幼い頃のスバルの話?
それとも、
逆巻家にやってきた新しい女の子(かぞく)の話?

……そうですね。
では、私の可愛らしいあの人の話をしましょうか。









「ユイさんはあの子たちに何かされていない? 意地悪だったり悪口だったり。あるならなんでも私に言って下さいね」

「いえっ、とんでもないです……」

「そう?」

「はい、大丈夫ですよ」

スバルの母親であるユリアを怒らせた時、どうなってしまうのか偶然見てしまっていたユイは、冷や汗をかいた。
あのアヤトが血相を変えて許しを請い、泣いていたカナトの涙は引っ込み、へらへらと笑っていたライトの顔はいつになく真面目に反省していたのだ。ユリアはというと、ニッコリ微笑みながら床に座った三つ子を見下ろしていた。彼女の後ろにはなにか黒いものが垣間見えた。彼らの普段と違う姿より、彼女のほうが恐ろしいと感じたのはユイだけの秘密だ。
彼女と一緒にいた後は大抵彼らがユイに嫌がらせをしてくる。そう、三つ子だ。たまにレイジやシュウにも何か言われてしまうのだが、一番酷いのは

「母さん」

「あら、スバル。どうしたの?」

彼女の息子である末っ子のスバルだ。
彼女と会話をしていれば、途中で入ってきたり、彼女が見ていないところでユイを睨んでたり。ただ幸いなのはスバルが物を壊さないことだろう。そんなことをしてしまえば彼女の雷が自分に落ちてしまうからだ。

「いや、……何でもない」

スバルはそう言って近くの壁に寄りかかる。

「ふふ、……スバル、こっちにいらっしゃい」

彼女は開いていた隣のソファーをポンポンと叩いた。すると、一瞬だけスバルの顔が嬉しそうになったのにユイは気づいた。ほんの一瞬だった為にユリアの隣のソファーに座る時は無表情だった。

「そうだわ。ユイさん、スバルの小さい時のお話を聞いてくださる?」

「え?、あ……」

ユリアのその言葉にユイは彼女越しにスバルを見てしまった。

「なんだよ」

ジロリと不機嫌な顔で睨みながら答えるスバルにユイは少し怖じ気づいてしまう。
「駄目よ、スバル。女の子をそんなに睨んでは」

「……別に睨んでない」

完璧に睨んでたよね。とユイは口には出さずに思った。

「そう? じゃあ、何から話そうかしら。あぁ、そういえばスバルは小さい時、私のお話を聞くのが好きで、よくせがんできていましたね。可愛らしかったんですよスバル」

幼いスバルを思い出しながら微笑むユリア。『ねぇ母さん、お話聞かせて』とスバルが言っていたことを、彼女はユイに話した。

「あ、……だからいつも話を聞いてたんですね」

彼が自分とユリアが話をしている時に入ってくるのはその為なのだとユイは思った。

「っな!? ……違う。オレはただ、母さんとお前が話してるのが気に入らねぇだけだ」

「こら、スバル。『お前』ではなくユイさんですよ」

「う……」

「可愛いのは今でも変わりませんね」

当にその通り。顔を背けたスバルの顔は紅くなっており、ユイも少しだけ彼が可愛いと思ってしまったのだった。









@@後書き@@
・どちらとも浮かんだのでコーデリアとクリスタの成り代わりを二つとも書いてみました。自分の母親とユイが会話をしているのに嫉妬して邪魔してしまうスバルは可愛いと思います。兄弟全員を会話で出すことが出来ずにすいません(^^;) 人数が多いとどうしても台本のようになってしまう……。






@@私の可愛い人@@

「娘が欲しいのなら言ってくれれば良かったものを」

「はい?」

「ユリアは娘も欲しかったのだろう? だからあの娘(こ)に」

「あなた。……私の話を聞いてくれますか?」
カールハインツを落ち着かせたユリアは優しく微笑む。

「私はスバルだけでも十分ですよ。これ以上あなたを嫉妬させてしまったら、あなたがとても愛してくれている私に……自分に自分で嫉妬してしまいそうです」

「それなら私も自分に嫉妬してしまうね」

「ふふ。……愛していますよ、あなた」

「私もだ」

息子以上に自分の夫が可愛いらしいと思うユリアだった。


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