I'd like to be the prince who rescues you.
リヒター成り代わり
息子視点


僕には大好きなお母様がいます。
お母様はお部屋から出ることができません。
お母様は僕と遊んだり、本を読み聞かせたりすることができません。
お母様は僕の言葉に反応してくれません。
僕はそれでもお母様が大好きです。



扉を開けて部屋に入ると、そこはすべて真っ白なもので埋めつくされている。壁、床、天井、カーテン、家具、そしてお母様の眠るベッド。そのすべてが白だ。

「お母様、こんにちは」

僕はいつだってお母様に会いに来て、返してくれなくても言葉をかけ続けます。

「今日も来ました。お母様が目を覚ましてくれるまで僕は止めません」

例え、あの大嫌いな父親が、僕とお母様がこうして会うことを禁じても。


ベッドの上で眠るお母様は、まるでおとぎ話のお姫様のようでした。
そう、お母様は眠り姫。
父様の呪縛の針で死んだように眠りについたお姫様。
部屋からでることもできず、手足は繋がれ、父様という見えない茨でも雁字搦めにされた可哀想な籠の鳥。

そして僕はお母様と父親を繋ぐ枷。

感情の無い人形のように『アイシテル』とお母様は僕の父親に言うだけだった。

それがお母様の本心でないことくらい分かっているのに、あの父親は狂っている。

「お母様、いつか必ずやあいつを殺して、お母様を救ってみせます」

さながら僕はお姫様を救う王子のようだ。

一度だけ、お母様が僕の言葉に反応したときがあった。反応していたと言っても、ただお母様が悪い夢(あいつのこと)を見て魘されただけだろうけど。

『……け、て。……す…て』

――助けて。

僕はその言葉にお母様の本心を感じた。頬を伝う涙がお母様の肌を濡らしていた。その涙を僕は拭って、そして決意したのだ。

「また来ます。 ユリアお母様、いつかその悪夢から目を覚まして、僕を愛してください」

あいつと刺し違えても僕は絶対にお母様を解放する、と。














@@後書き@@
・リヒター成り代わりのはずなのに息子が出張る結果に。
・子どもを産んで、その子どもが5、6歳くらいになった時くらいから成り代わり主は眠り続けたままです。
・感情を殺してカールハインツを『アイシテ』も耐えきれなくなった主は眠りにつくことで逃げてしまいました。それでもカールハインツの呪縛からは逃れられず、夢でさえも彼が出てくる。
・息子くんはそんな風にしたカールハインツを憎んでおり、自分が主とカールハインツを繋ぐ枷だということを酷く嫌っています。

本当は起きたまま出そうと思ったのですが、それでは原作クリスタと同じ感じになってしまうのでこういった形になりました(^^;)


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