クリスタ成り代わり3
妊娠・出産編


咲き誇る白薔薇の庭園には美しい銀髪の女の人がいました。彼女の名前はユリア。庭園の持ち主であり、ヴァンパイアの長であるカールハインツは彼女の夫です。

ユリアは微笑みながら薔薇達を愛でます。そこに一人の少年が駆け寄ってきました。彼女と同じ、銀髪に赤い瞳の少年です。

「母さんっ、またここにいたんだ」

「ふふっ、スバル。どうしました?」

「また、お話聞かせて?」

ユリアの息子のスバルは彼女の話をよく聞きたがります。今日はどんな話を聞きたいのでしょうか。

「良いですよ」

近くにある東屋に向かう彼女にスバルは着いていきました。


椅子に腰かけたユリアの膝にちょこんと座ったスバルは嬉しそうな顔をしています。

「さて、今日は何を聞きたいですか?」

「んと……。あっ、じゃあオレが生まれたときの話!!」

「分かりました」

スバルの髪を撫で微笑むと彼女は語りだします。



――あれは冬の時期でした。

スバルをこの身に宿した時より、貴方の父様はものすごく私の身体を心配していました。それはもう、一度私が何かしようと動こうとするものならば、血相を変えて私のそばにやって来て「私や使用人がするからどうか安静にしてくれ」と言うくらいに。ふふっ、あの父様がですよ。大きくなった私のお腹に、……そう、スバルがいた所です。そこに顔を近づけた途端に貴方が中から蹴るものだから父様は吃驚してとても面白かったんですよ。私がお腹を撫でると蹴るのを止めてしまうから父様はやきもちを妬いてしまって。ええ、そうです。いつもの父様とは考え付かないでしょう?
それが微笑ましくて「この子が生まれて、大きくなった時に意地悪するのはダメですよ」って言ったんです。そうしたら何と言ったと思います? 「善処するよ」ですって。どうかしら、スバルは今、父様に意地悪されていない? 良かった、意地悪されたら私に言ってくださいね。私から父様に言っておきます。「スバルにばかり構うと私も貴方に意地悪します」って。
と、話が反れてしまいましたね。その数日後に陣痛が来て、貴方を産む私より父様の方が尋常でないくらいにドキドキしていたの。分娩室に入って父様の手を握りながら痛みに耐えている時に「生まれた子どもと一緒に星を見に行こう」と言ったんです。それも昴……そう、貴方と同じ名前のスバルを。
痛みに負けてしまいそうになっても、私はその言葉で貴方を産んで絶対に父様と一緒に星を見るために耐えました。
貴方の小さな頭が少しずつ出てきたことを産婆さんから聞いて、スバルも頑張っているのだと言い聞かせてくれた父様の手は薄く汗ばんで、冷たいはずなのに温かくて。
そして「おぎゃあ、おぎゃあ」と貴方が元気よく泣く声に、酷く安心したのを今でも覚えています。
貴方を胸に抱いたときに、
「ああ、私はやっと貴方の母親になれた」と感じたんです。嬉しくて泣いていると、父様までもらい泣きしてしまって。……本当に私は、貴方の母親になれて嬉しかったのです――



ユリアはそう言って、自分の膝に座ったスバルの頭を優しく撫で、抱き締めました。

「ふふ、どうでした?」

「あのね、母さん」

「はい」

「オレも母さんの子どもに産まれて良かった」

そこには、満面の笑顔がいつまでもユリアを見上げて咲いていました。











@@後書き@@
アユミ様、長々としたものになってすみません(^^;)
クリスタ成り代わり、出会いからスバル妊娠・出産まで長くかかってしまいました。 最後は三人称にしてスバルに話を聞かせる夢主という構想は練っていたので最後はすんなりと書けました。
成り代わり主なのでスバルの性格も少し変化させているつもりです。
そしてカールハインツ様が似非になってしまってごめんなさい。
※スバルの名前の由来は(自分なりに解釈している部分があるので)あくまでフィクションです。
では、長々と失礼しました。

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