小説 | ナノ


※ダクフェの公式ファンブックの書き下ろしVSを成り代わり主でやってみた。
※都合上百合っぽくなる。





「ねぇ、ユイちゃん……その手のひらの傷……どうしたの?」


ユイちゃんは私の言葉を聞いて、初めて怪我に気づいたのだろう。

「さっき、シンくんとぶつかったときにできたのかも」

「痛い?」

「……少し、ひりひりするかも」

「見せて……」


そう言ってユイちゃんの手をとり、傷口に触れてみる。

「っ!」

「ユイちゃん、すごく……痛そう」

「たいした傷じゃないから、大丈夫だよ」
傷口を見ながら話すユイちゃんの言葉を聞きながら、私はシンさんを睨み付ける。

「先に言っておくけど、ぶつかってきたのはそこの女からだから。むしろオレは、助けてやったようなもんだゼ」

ユイちゃんの表情を見て、シンさんが言っていることが嘘でないことはわかった。でも、私は悔しいような気持ちになる。
どうしてユイちゃんの手に私以外の人がつけた傷があるのだろう。


「ユイちゃんは……その傷を見るたびに……シンさんを……思い出すのかな」

そう考えてしまうと、なんともいえない思いで余計に胸が苦しくなる。

「ねぇ、ユイちゃん……その傷……私が上書きして……あげる。こうして……」

私はユイちゃんの手を取り、自分の口元に傷口を運び吸血をする。

「――ッ! トウカちゃん、痛いよ……やめて」


目元に涙を浮かべながら、ユイちゃんが私を見てくる。傍にシンさんがいるのにも関わらず、ユイちゃんの目には私しか映っていない。

「見て、ユイちゃん……さっきまで、擦り傷だったのに……いまは私の牙の痕に……変わったよ」

これで『シンさんとぶつかったときにできた傷』ではなく『私につけられた傷』になった。手のひらを見るたびに、私のことだけを思い出せばいいんだ。
こうして、ユイちゃんの身体に残っている他の傷も、すべて私が変えていけばいい。

「他には? シンさんに……つけられた傷……あるなら私が」

「黙ってれば好き勝手しやがって。オマエ、こっち向けよ」

シンさんの声が聞こえるとともに、ユイちゃんの視線が私から外れていく。

「シンさん……ユイちゃんを、離して」

懸命に話しかけ、ユイちゃんを奪い返そうとするが、シンさんの力に私は敵わない。

「ねぇ……。シンさんじゃなくて……私だけを、見て。こっち……向いてよ」

顎を掴まれて彼の腕の中にいるユイちゃんがこちらを向くことはなかった。しかし、私の声は聞こえているのだろう。
懸命に、私の前にユイちゃんの腕が伸ばされる。

「ユイちゃん……私は、ここに……いるよ」


ユイちゃんの腕を取り、その手を握りながら更に吸血を続けていると、ユイちゃんが握り返してくれるのが伝わる。

「シンさんから……すぐに奪い返す……からね」

ユイちゃんの手を握り返しながら、私はユイちゃんの腕に更に、自分の牙の痕を残していった。










おまけ★
in楽屋

「ユイちゃん、痛かったよね……。ごめん」

「大丈夫だよっ!!(むしろもっと吸っても良いよ)」

「シンさんも、……いくら演技、だからって……睨んで、ごめん……ね?」

「ああ、いや平気だし……(逆に上目遣いありがとうございます)」


無神三人「「「この野郎」」」





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