小説 | ナノ




「兄上、こちらが今回の報告になります」
「ありがとう、リヒター」

「いえ、仕事ですから」


やだもうリヒターがイケメンすぎて辛い。体が女だったら絶対抱きついてた。
いやもう、ビジュアル見た時からすっごくタイプで困った。死んだ目して悲しそうな顔してんだもん。あ、こいつマジでタイプだって思ったし。哀愁漂うおっさんに引かれる私はただの腐った女子だよ。

「リヒターがいると本当に助かるよ」

書類とか書類とか書類とか。
いや書類しかないんかい!?

あ、でも夜会で女の人とかに言い寄られたりしたら助けてくれるんだった。

中身女だからしょうがないよね。
だって媚び売ってるのまる分かりだし。
化粧だって『何この人厚塗りすぎ』とか『チークやりすぎて気持ち悪い』とか『ニセチチだな』とか思っちゃうもんな。
苦笑いしてスルーするけど女の人たちは寄ってくるし。大変だな美男子って。


「兄上には私も助けられていますから」

お互い様です。とリヒターは言う。
イケメンかお前。
しかも微笑んでるよリヒター。レア、まじもんのレアだ。シャッターチャーンス。うわ、アタックチャーンスみたいなフレーズになった。 カメラねーよ、ちくせう。イライラしてきた、指パッチン爆破してーわ。『苛烈、苛烈』とか言いながらな。……いやだからジャンル違うっての。

「兄上?」

「何でもないよリヒター。……そうだ、これが終わったらお茶にしよう」

「兄上のパウンドケーキは」

「抜かりないよ」

ただの腐った女子でも女子力高いのが私だ。いや、今は男だった。なるほど、これが乙男(オトメン)か。
というかリヒターの死んだ目が煌めいたね。あれか? いざっていうときには煌めくってやつか。
それほどパウンドケーキが好きなのか、リヒター。

「私は兄上の作ったものなら何でも好きですから」

「ゴフゥッ!?」

「あ、兄上!? 大丈夫ですか!!」

吐血。
まじ何なのリヒター、お前イケメンか。イケメンすぎるだろ。



私の弟がこんなにイケメンな訳がない。
どこぞのラノベタイトルじゃねーか。
いーぞ、執筆してやろうか。私のリヒターへの滲み出る思いを原稿用紙に書き殴ってやろう。まさに狂気。





しないけど。









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