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レイジ成り代わり女主





今日も今日とて逆巻家は平穏無事でいられません。

「おい、トウカ」

「なんです?」

「膝枕」

ピシッ と私のこめかみに皺ができます。 またこの逆巻家長男は私が掃除をしているというのに(掃除に限りませんが)邪魔をしてきます。

「しません」

「チッ」

「舌打ちしないっ!!」

「母親か」

私もそう思いましたよ。
ああ胃が痛い。

「トウカはどこですっ」

今度は何なんですか。この声はカナトですね。ヒステリーを起こすのは止めてほしいです。そして無駄に広い逆巻家のリビングにカナトが入ってきます。

「一体どうしたというのです」

「見つけましたよ、トウカ。はやく僕にお菓子を作ってください」

「嫌です」

「なっ、僕が作れと言ったら作れば良いんですよ。どうして作ってくれないんですか。そんなに、そんなに僕が嫌いなんだ」

「嘘泣きしないっ」

「チッ」

この流れはさっきのシュウとの会話と似ている気がします。

「ちょっとトウカちゃん、ボクの本どこやったの〜?」

はぁ、疲れる相手がまた増えました。
三つ子のうちの変態(ライト)がリビングにやって来ました。

「部屋にあった本なら掃除の時に捨てましたよ」

「ボクが捨てないでって言ったら捨てないでよ〜」

「私は捨てていいと思ったものは全て捨てますと最初に言ったはずです」

この変態(ライト)の性癖がどんなものかを目の当たりにした私の心は疲弊しています。ああ、頭も痛くなってきました。

「トウカっ!!」

「今度はなんですっ!?」

あまりのことに私は声を荒げてしまいます。名前を呼んだのは逆巻家の三つ子の一人であるアヤトでした。

「俺様にたこ焼き作れ」

「お断りします」

「はぁ? 俺様が作れって言ったら作れよ」

カナトと同じことを言わないでくれませんかね。さすがは三つ子と言うべきでしょうか。

「少しは自分で動こうとは考えないのですかっ、貴方達は!!」

もう嫌です。胃に穴が空きそうです。

「……トウカ」

「……なんです?」

後ろから聞こえたのは末っ子のスバルの声でした。私はイラつきながら答えました。

「掃除終わったぞ」

そう言えば、スバルは何故か私の言うことを聞くんですよね。
自分の部屋の掃除をするように言いつけてあったんでした。

「そうですか、よく出来ましたね」

スバルの背が高くて私の手が届かないので少しかがんでもらって彼のふわふわの髪をなでます。スバルだけが私の癒しな気がします。

「あぁ……///」

「後で何か作って差し上げますよ。何が良いですか?」

「「「「レアステーキ/お菓子/マカロン/たこ焼き」」」」

「貴方達には聞いてませんよ!?」

まったく、うちの兄弟達ときたら……。
手が掛かりすぎます。

「別に、……トウカが作ったものなら……なんでも良い///」


顔を紅くして言うところも可愛らしいですね。それに最高の誉め言葉で嬉しいです。

「では、私特製のカルボナーラを作って差し上げましょう」


貴方達もそれで良いですね?

私は他の兄弟達にそう言ったのでした。




今日も今日とて、逆巻家は賑やかです。








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