小説 | ナノ


「あの、トウカくん」

今、家に居候(誘拐して)している小森ユイが俺に話かけてきた。とても迷惑だ。あまり関わりたくない。というのが俺の気持ちだ。前はただ普通の女子高生(少し腐女子)だったのに、何故、俺がDABOLIC LOVERSのキャラである「無神ユーマ」のポジションに成り代わってしまったのだろうか。ちなみに俺は無気力ダル男や俺様や棺の引きこもりが好みだった。
ん? 女子高生だったのに「俺」は可笑しい?
仕方がない、それは「無神ユーマ」を目指そうとして自分の一人称を「俺」にしたからだ。

「ちょっとー、エム猫ちゃん。トウカは女の子だよ」

無神コウ。一応家族……に分類されるのだろう。血は繋がっていないが。


「えっ!?」

「おい、コウ」

なるべく関わりたくないから避けてたし、嫌な態度もとっていたのに、どうして彼女は近づいてくるんだろう。そして他の兄弟達も。
俺は話に入ってきたコウに少し不機嫌になる。

「いーじゃん別に、トウカ」

「ごめんね、えっと……、トウカ…ちゃん?」

「気持ち悪い。ちゃん付けしてんじゃねぇよ」

「もー、トウカったら」

「ごめんなさい……」

嫌な態度をとると彼女はすぐに謝ってくる。それがひどく苦痛だ。彼女が悪いわけじゃないのに。

「はぁ……。で?」

「?」

「何か用があったんじゃねーのかよ」

「あっ、うん」

彼女のそんな顔を見るのが苦しいので、一応は聞いてやると彼女はパッと表情を変えた。

「トウカくんがこの家の菜園を手入れしてるって聞いたから、私もその手伝いをしたいな……って」

菜園を手入れしているのは本当だ。そしてこの家の庭を管理してるのも俺。成り代わる前は、家でガーデニングをしていたこともあった。ゲームでモアブラのキャラを見た時に「無神ユーマ」が家庭菜園をしていることを知って、妙に親近感が沸いたのはその時だ。

しかし、どうしたものか。彼女がそんな提案をしてくるとは。避けまくっていたツケがここにきて最悪なことになるとは。

「……」

返答に困った俺は「無言」という答えにもなっていない答えを出した。

「トウカくん?」

「トウカ」

「あ、ルキくん」
小森ユイが俺の名前を呼ぶのと同時に、無神の長男であるルキが俺を呼んだ。

「何だよ」

「話がある、来い」

「あ? ああ」

ルキに助け船を出されたことに気付き、俺はユイの前から離れ、ルキについて行く。

「あっははー、エム猫ちゃんったらざんねーん」

部屋を出るとそんな声が耳に届いた。
まぁ、致し方ない。
罪悪感は残るけれども、なるべく関わりたくないし。


「ルキ、助かった」

今回ばかりはルキに助けられた。今回に限らず、ルキは何かと俺を助けてくれる。 性格のわりにはどこか優しい。さすがは兄だ。

「ああ」

「なあ、今日はロールキャベツで良いか?」

菜園のキャベツが食べ頃になったんだ。と俺は言う。

「それでいい、頼む」

「っし!! じゃ、頑張るか」






―拝啓、前世の父さん、母さん。
俺(私)は今、第二の人生を新しい家族と過ごしています。











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