「あっ、あの。はじめましてベアトリクス様」 「ええ、はじめまして」 私の目の前にいらっしゃるのはカールハインツ様の第一夫人であるベアトリクス様です。今日はベアトリクス様に挨拶を、と思った私は会いに来たのです。 優しく微笑んでいるベアトリクス様はどこか私の母と似ていて落ち着きます。 「不束者ですが、よろしくお願いします」 私はペコリと頭を下げました。 「ふふっ、それでは私に嫁いできたみたいではありませんか」 「あ……、そうですね」 少し恥ずかしいです。 「あの方が貴女に惹かれるのも無理はありませんね」 こちらこそよろしくお願いしますね。と、にこやかにベアトリクス様はおっしゃいました。 それから暫く談笑をしていると、私たちのいる部屋の扉が開かれ、カールハインツ様が現れました。 「楽しそうな声が聞こえたので、寄ってみたら、随分と親しくなっていたようだ。少し妬けてしまうね」 「女同士ですもの。話が弾むのは当然ですよ」 私たちが座っているソファに近づいたカールハインツ様の言葉にベアトリクス様が答えます。 「それもそうだね」 ―でも、 「独り占めはよくない」 そう言って私を引き寄せてカールハインツ様が抱きしめます。 「カールハインツ様」 「仕方がありませんもの。私もコーデリア様を好きなのですから」 「ベ、ベアトリクス様!?」 「それは宣戦布告かい?」 混乱する私を他所に、私の髪を撫でながらカールハインツ様が答えます。 「そう取られても構いませんわ」 にこやかに笑っているものの、ベアトリクス様の後ろには黒いものが見えた気がします。抱きしめられていて顔が見えませんが、カールハインツ様も同じ顔をしている雰囲気です。 「これは強敵だね」 next back |