暫くの談笑の後、カールハインツ様は私にこう言いました。 「キミは、『コーデリア』は私と踊ってくれるか?」 そんなことを言われたのは、後にも先にもカールハインツ様しかいないでしょう。 多分、この時に私の心の中に何かが芽生えたのかもしれません。 私をダンスに誘う方達にそんなふうに言われたことが無かったからかもしれませんが、それだけでも私は嬉しかったんです。 私を、『コーデリア』自身を見てくれたことが。 何かが違う、はっきりとそんな気がしたのです。 「……はい」 私はカールハインツ様の手に自分の手を重ねてそう言いました。 城の中から小さく聞こえてくる音楽は、テラスで秘かに踊る私達にはぴったりでした。 その日の夜会は、私にとって忘れられない記憶となっていったのです。 prev back |