「ところで、キミはこんな所にいるが、踊らないのかい?」 彼はそう言いました。 「……踊れない訳ではないのですが。お誘いしてこられる方は私が魔王の娘だからというだけの人ばかりですから」 私自身を見てくれる人はそう居ません。そんな方と踊っても、私は嬉しくありません。だから私はあまり夜会が好きではないんです。 「でも。……それでも、貴方に会えて良かった」 少しだけ、夜会も良いと思えました。 「っ///」 「どうかなさいました?」 私の言葉に顔を赤くした彼はプイと横を向きました。 「いや、……そう言えば名前を言っていなかったな。私はカールハインツと言う」 「コーデリア、私の名前はコーデリアです。カールハインツ様」 「しかし、魔王の娘だったとは……。コーデリア様、と呼ぶべきか?」 「いえ。多分、私はカールハインツ様よりも年下ですから呼び捨てで構いません。それと、敬語も使わないで下さい」 魔王の娘としてではなく、私を、『コーデリア』自身を見て欲しいのです。 prev next back |