「兄上」 そう言って、私達がいる部屋にやってきたのは緑色の髪に赤い瞳の男性でした。 「リヒターか、どうした?」 「どうしたかではありません。まだ仕事が残っているんですよ」 どうやら、カールハインツ様は仕事を放ってきていたようです。リヒターとおっしゃる方の瞳はどこかカールハインツ様に似ていました。 「仕方がないだろう、私のコーデリアがベアトリクスに取られてしまっていたんだ」 そんな、取られるだなんて。私はベアトリクス様とお話をしていただけですが……。 「お仕事もなさらずにいらっしゃるなんてますます貴方にコーデリア様は任せておけませんわ」 「あ、あ……。私、ごめんなさい」 私のせいでカールハインツ様は仕事を投げ出していることに申し訳なくなってそう言いました。すると、 「お気になさらないでください義姉上」 「え? あねうえ?」 リヒターさんは私に言って側にやってきました。 「お初にお目にかかります。そこで仕事をサボっている兄上の弟のリヒターと言います」 綺麗なお辞儀をして見せたリヒターさん。私はカールハインツ様の弟だと知ってびっくりしました。 「なんということだ、私のコーデリアに会わせるつもりは無かったというのに」 「兄上が仕事をなさらずにこちらで話をしているからですよ」 「さあ、早くお仕事に戻られてはいかがですか?」 「くっ……、お前たちは私からコーデリアを奪うというのか」 「カールハインツ様、私のことを気にかけてくださるのは構いませんが、あの……お仕事はちゃんとなさってください。でないと、皆さんが困ってしまいますから」 少しでもカールハインツ様がお仕事にもどっていただけるように私はそう言いました。 「リヒター、私は仕事に戻る」 「最初からそうしてくれませんか、兄上」 「仕事が終わったらすぐに会いに行く」 「ではそれまで私とお話をしていましょうね、コーデリア様」 「ベアトリクス、覚えているが良い」 「失礼しました」 カールハインツ様はリヒターさんを連れて部屋から退室しました。 それにしても、カールハインツ様の最後の言葉は何処かで聞いたようなフレーズでしたけど、なんだったんでしょうか。 prev back |