成り代わり | ナノ


歌い続ける私を満月だけが照らします。

私は月が好きです。それも満月が。
魔族だからなのかもしれません。魔界にも朝と夜がありますが、一部の魔族は朝などいらないと言う人もいます。魔界を創った魔王である父が、どうして夜の世界の者が忌み嫌う朝を創ったのか。

私は一度だけ間接的に聞いたことかあります。
父は人間界に憧れており、人間の友人まで作る変わり者でした。その時の友人というのが私の家庭教師をしていたノインという人です。彼は銀髪に黄色と水色のオッドアイを持ち、かなり背が高いです。
今は魔族ですが、元々、人間であった彼は父の力により不老の力を得ました。彼がオッドアイなのはその力の反動らしいのです。
人間界で教師をしていた彼は紆余曲折して魔王の娘である私の家庭教師になりました。


『あいつが魔王って知った時は冗談かと思ったな。しかもその後に魔界にも朝を創るとかなんとか言い出して』

『とにかくあいつは憧れてたんじゃないか? 俺が魔界に憧れてたように』

ノインは私にそう言いました。

『例えば、ほら……好きなやつがいたとするだろ? そしたらそいつの真似とかをしたくなる、みたいな。そんな感じだ』


それは慈しむような、優しい表情(カオ)でした。






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