…
夏目くん
夏目くんは妖が見えるんだよね
私もね 見えるんだ
そう告げた彼女の瞳は揺らぐことなく俺を真っ直ぐ見ていた
「 君は 一体 」
「 私は ―― 。」
彼女の声は聞こえるのに 名前だけノイズが入って聞こえない
「 ふふ、 私の名前は誰にも聞こえないの 」
嗤う彼女の長い髪がふわりと揺れる
その時 はっと気づいた
彼女の体が透けて見えていることに
先程までそんなことはなかったのに
「 君は 」
「 さようなら 夏目くん 」
すうっと 彼女の体が消えていった
「 夏目? 其処で何をしてるんだ 」
「 先生 …いや 何でもないよ 」
「 そうか ん? 」
「 先生? 」
「 木蓮か 」
辺りには木蓮の香りが立ち込めていた
「 確か此処には木蓮の精が居たな 」
そうか 彼女は木蓮の精だったのか
木蓮の精と夏目のはなし
2013/03/24 22:17