Other Dream


タイトル・確かに恋だった



「えっ・・・それ…つまり、解雇…ってやつですか?」
「いや、人事異動と言っている」
「な…なんで…隊長…」

こんにちは、六番隊第三席でおなじみの如月茜です。
えっ?全然おなじみじゃない?ちょっと恋次、まるで私が影薄いみたいじゃない!…まぁ実際薄いんだけど。
副隊長がサボり続ける雑用を黙々とこなし続けて早数年。
…え?今度は何?…いや別に数年じゃないとか細かい突込みはいいんだよ!言葉のあやってのも分からないの?つーか人の心読むな!!…この通り恋次先輩からの厳しいいじめにも耐えてまいりました。

何故って、決まっています。
すべては私が落ち込んで座っている席より二十尺くらい離れた先にいる我らが隊長のためです。
この世界の規律、掟を守ることを第一とする朽木隊長が十番隊の五席だった私を引き抜いたあの日以来…そう、すべては朽木隊長の御為に!
朽木隊長のために剣を振るい、朽木隊長のために筆を奔らせ、朽木隊長のために瞬歩する…そう、私の一日の行動の約八割はお慕いしている朽木隊長の愛ゆえの行動!

それなのに。
それなのに朽木隊長は、突然私を呼び出すなり「今までよく働いた」の一言だ。
人を滅多に褒めない朽木隊長の一言に、大体みんな警戒する。私ももちろん警戒した。
そして気づいた。「今まで」という言葉の意味に。
そう、つまりこれは、ドラマでよくある社長が社員に下すあの一言と一緒…。
リストラって奴だ。リストラ。

「もう信じられない…」

朽木隊長の左腕の親指の爪として、一生懸命働いてきたのに、どうして私が移動しなければならないのか。
ちらりと、朽木隊長のいる執務室を恨めしげに見つめる。
今頃朽木隊長は、私の異動先やらなんやらの書類を書いているのだろう。最後にもらえるお手紙が別れのお手紙だなんて解せぬ。

「あーあ、これからどうしようかな」
「お前…人生終わったみたいな顔すんなよ…一生会えなくなるわけでもないんだし」
「そういう問題じゃないよ…私は朽木隊長の側で働いていたいんだって!じゃあ恋次、卍解仕えるんだしどっかの隊の隊長にでもなれば?大出世するし、いいんじゃない?」
「はぁ!?オレは隊長を超えねーと意味が・・・あ、」
「そういうこと」

ようやく納得してくれた恋次に溜め息。
ここまで言わなければわからないのか、と。

…嗚呼、遠くで隊長の声が聞こえる。茜、と。
きっと私に手渡す書類がまとまったのだろう。
朽木隊長から貰える最後のお手紙、しょうがない、貰いに行きましょう。

****

「…今までお世話になりました」
「…顔が暗いな」
「笑えませんよ。だって、朽木隊長のそばにもう行けないんですよ?」

最後だから言いたいことを言ってしまおう、そう思って自嘲するように笑った言葉。
朽木隊長は何も答えてくれない。当たり前だ、朽木隊長にとって私という存在は、ただの部下。それでしかないのだから。

「…もう、いいです。移動先、どこですか?」

なんだかもう、この場に居ることも辛くなった私は朽木隊長を急かす。
無言の朽木隊長が差し出した書類に書かれた文字を見て、私は眼を丸くした。

婚姻届
「どうする?」「…どうするって、え?」「兄は私の傍で働けるならそれでいいと言ったな」「妻の務めって奴ですか…敬愛する隊長のため、私は何処へでも行きますよ」


****

白哉様お誕生日記念。
敬愛だけで結婚しちゃったけど、そのあとは恋愛に変わればいいよ!



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