Short Dream



※前回の香水と同じ謎空間話


「夜分にごめんね。discord繋いでいい?」
「いやもう繋がってるんだが」

そろそろ寝るか、そう思ってシャーペンを筆入れに閉まったところで携帯の通知が鳴った。昨年同姓同名の推しの香水が出るとかなんとかで騒いでいたクラスメイトからだ。あれからも定期的にアクスタがとか最近推しが強いだの知らない話を延々としてきたがまだやっているらしい。どうせ今日もその類の話だろう。神妙な声を発しているがどうせ二言目には推しとやらの名前が出るに違いない。

「ネジのフィギュアが取れなくて…心がもう折れそうで…」

そら来た。
いやというか時刻は深夜零時。取れないとはなんの事だ。聞かなきゃいいのに「何の話だ」と口に出してしまった。もう寝ると言えばよかったのに問われた歩は水を得た魚のように話し始めた。

「とうとう発売したんですよ、『NARUTO疾風伝 VIBRATION STARS 日向ネジ フィギュア』が。2023年1月19日に各ゲームセンター店舗でクレーンゲーム商品として来たんですよ」
「宣伝口調やめろ」
「八卦六十四掌発動時の構えを再現してるかっこいいフィギュアでね、ライティングがおしゃれなの。まあライティングのせいで実際の作りなんもわかんないだけどね」
「貶してやるな」
「でね、明日が待てなかったからオンラインクレーンゲームで早速取ろうとしてるんだけどまあ難しいというか全部運なんだよね。わかる?あのピンポン玉掴んで当たりの穴に入れるってやつなんだけどまあ確率穴が15個あるなら15分の1だと思うじゃん?ところがどっこい場外にいかれる事もあるからそうでもないのよ」
「……」
「心折れそう」

電話越しに半笑いの声が聞こえた。いや、だから何をどうしろと言うのか。止めろと言うべきか次は取れると励まして欲しいのか。いずれにしてもオレには一切合切関係の無い話だった。まあ、強いて言うなれば。

「まあ言うてちょっと試しになんて言って2000円注ぎ込んだ時点でもう戻れないんだけどね…」
「…まあ、金を出さない限りは取れないからな」
「そうそう、課金するたびに私はネジが取れる運命に近付くの。というわけで今からかんたん決済に手を出します。運命なんて誰か(クレーン)が決めるもんじゃない」

それは運命というよりはただの廃課金者ではないのか、という言葉をなんとか飲み込み、「オレは寝るからな」と通話を切る。「この眼は闇がよく見える」とかなんとか言っていたがそれ以上は聞かなかった。もしかしたら同姓同名のフィギュアになにか思うことがあったのかもしれない。いや、ない。絶対に。それこそどう運命が転がろうと無い。

翌日弁当にもやししか入っていない歩の窶れた笑みを見かけることになるがそれはまた別の話。


終われ





たまたま寝れなかったのと設置先が死ぬほどに遠かったのでタイトーのやつで取りました。たこ焼き穴にピンポン玉入れてあたりの穴に入れば取れるよ。まずは無課金でもレクチャーしてもらえるやつを細々こなせば少しはポイントが貰えるよ。私は18回深夜にやりましたが課金する度に見えない店員さんがはみ出たピンポン玉を穴に入れてくれたりしてもらってなんとか取れました。みんなも日向ネジを手に入れよう。ぶっちゃけこのあとがきが本編です。もっと違うことを書けよとは言ってはいけない。


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