おめでとうということでネジヒナ小話を詰め込んでみました。



*険悪期*

「オレの誕生日祝ってくれただろ?あの時嬉しかったんだってば。だからヒナタも、おめでとう!」

遠くから聞こえた能天気そうな男の声を聴いた瞬間、涙を微かににじませながら微笑む彼女の顔を見た瞬間、腸が煮えくり返りそうなほどの憎しみを感じた。
良い気なものだ。分家という犠牲の元で成り立つ宗家の姫君。信じられないことに実の妹にも劣る出来そこない。そんな彼女がよくもあのような男に恋など。

くだらない。夢を見るのも大概にしろという話だ。

だから、罵ってやった。
思っていたことをそのままに、不快だと一言いうだけで、彼女は先ほどの笑みを消し去った。浮かぶ涙はさっきの男に見せたものとは違うもの。

「ごめんなさい…ごめんなさい…」

狂ったように謝り続ける彼女。ああ、情けない。宗家の姫君が分家のオレに頭を下げるか。
(それにしても、なんだろうか。この痛みは)
望んだ結果が目の前にあるというのに、いったいオレは何に心を痛めているというのか。この腹立たしさは憎しみとはまた何か違うもののような気がする。
(分からない)
頭を下げ続ける彼女を視界から消し去っても、その謎の不快感は消えなかった。

(本当はまともに祝いたかったのに、天邪鬼が覆い隠す)



*夫婦編*

「…」
「…え?あの…」

いつもと変わらない時間に帰ってきたネジ兄さんは、突然無言で私に花束を差し出した。

…父上の言いつけで結婚した私達。最初はぎこちなくて、うまく話すらも出来なかったことを覚えている。…過去のことは和解出来たんだけど、やっぱりなんだか落ち着かなくて。

でもまずは朝の挨拶とかからはじめて、少しずつぎこちなさを無くしていって…結婚して一年、もう何も違和感は無くなったはずなんだけれど…なんで、突然?

今日は何かあったのかな、それとも任務とかで貰ったとか…駄目だわ、全然わからない。
そんな私の気持ちを察したのか、ネジ兄さんが呆れたように溜息を吐く。それから、私の胸元に花を押し付けてそっぽを向いて呟いた。

「…あなたは、自分の誕生日も覚えていないのか」

あ、と私はそこで今日が12月27日だと気付いた。そうだ、誕生日だ。…ネジ兄さん、私の誕生日、覚えていてくれたんだ。
プリムラとマーガレットの花束。花を彩るリボンは私が好きな色。…なんで、こんな小さなことまで、覚えてくれているんだろう。
じんわりと視界がかすんでいく。いけない、泣いたら、誤解されちゃうかもしれない。だから私はちゃんと前を見て微笑んだ。

「ありがとう、ネジ兄さん」


(プリムラ…永続する愛情、運命を開く。マーガレット…秘めた愛、誠実)



*再会編*

柔らかな日差しが老人の体を微かに照らす。幼い子供はしわがれた、しかし染み一つもないその手を優しく繋いでいた。

「おじい様、私の声が聞こえますか」

子供が優しく微笑むと、老人は微かに顎を動かす。それからかすれた声で、「今はいつだ」と呟いた。
子供はそれを聞き、病室にかけられたカレンダーを見る。不意に視界に入った外の光景は、あたり一面が白で覆われていた。

「12月26日で御座います。もう師走も終わりですね。おじい様」
「・・・そうか…」

老人は子供の言葉を聞き、安心したように瞳を閉じる。
…そうか、やっとか、やっと来たのか。
感慨深い何かが、老人の心を満たす。もう殆ど何も見えない筈の嘗ての天眼に、ぼんやりと光が差し込んで見えた。ああ、笑っている。「もういいよ」、と。

「そうか…明日は、あなたの誕生日だったからな」

そう言って優しく微笑んだ祖父は、翌日永遠の眠りについた。
忍びとしての道を生き続けてきた祖父が、こうした穏やかな死を迎えられたのはきっと、先に旅立った彼女のおかげだろう。

線香を炊いた部屋の向こうを見る。縁側のそばの松の木に留まっていた鳥は、静かに日輪の元へと羽ばたいた。

(誕生日、おめでとう)(もう年は取らないのに?)(嫌か?)(…ううん、うれしい)


****

ヒナタ様お誕生日おめでとう!ということで小話つめこみました。
最近の本誌のナルトは辛いですが、二次創作は明るくということで!


入れられなかったRoad to↓

「…おいネジ、私の部屋で何をしている」
「…っひ、ひなた様…あの、これは」
「さては…また下着を荒らしに来たのかっこの屑がぁああ!!」
「ちがいます!断じて違います!!オレはこれをヒナタ様の部屋に置いて、後から驚かせようと…」
「…なんだこれは、花?」
「…ヒナタ様、今日誕生日だから…あ、あの、花言葉とかはよく分からないですが…」
「そうか・・・その、なんだ?…ありがとう」
(あ、笑った)

お粗末様でした。

 

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