7.籠の中の鳥


あなたは逃げることのできない運命の印を刻まれている。

籠の中の鳥。
縛られた運命。

壊してしまいたい呪いの因果。
この一族は、こんな印で人を縛ってでも守りたいものなの?
こんなやり方でしか守られない一族、なくなっちゃえばいいのに。

だって、それであなたは傷ついた。
深い闇の中に、あなたは突き落とされてしまった。
大好きな人の苦しむ姿だけは、見たくなかったのに…。


「ヒナタ様?花を…」
横でネジ兄さんが慌てた声で私に話しかける。
「あ…ごめんなさい…ネジ兄さん…叔父様」

なぜこんなことを唐突に考えたか。
それは…今日が、ヒザシ叔父様の命日だからだ。
私のために、宗家のために、死という道を選ぶ結末となった、彼の。

そっと、骨のない墓標のそばに花を添える。
そして、祈りという名の懺悔を私は繰り返し始めた。

ごめんなさい。
こんな印のせいで、あなた方を苦しめました。
ネジ兄さんごめんなさい。
ヒザシ叔父様ごめんなさい。

「終わりましたか?」
「あ…はい」

優しくネジ兄さんが微笑んだそれだけで、私の胸がちくりと痛んだ。
いつもは大好きなその笑顔も、今日は疑いを抱いてしまうの。

“その優しさは宗家に逆らってはいけないから、そう振る舞ってるだけだとしたら…”

そんな疑問がはっきりと形になって浮かびあがる。
一度この思考に入ったら、もう止まれない。

「ヒナタ様?」

“様をつけるのも私が宗家だから?”

「ごめんなさい…」
そして、最後に無意識に出た言葉。
ああ、私はなんでこうしてネジ兄さんに迷惑をかけちゃうんだろう。
けれど、自分ではどうしようもできなくて。
「こんな呪印のせいでヒザシ叔父様とネジ兄さんは───……!!」
どうしても言葉を、感情を抑えることが出来ない。
どうにもならない思いで、心が張り裂けそうになる。
でも涙が溢れ出しそうになった私を、抱き留めたのは皮肉にもネジ兄さんで。

「ヒナタ様、落ち着いて下さい」
「ごめんなさい…私のせいで…ネジ兄さんやヒザシ叔父様は…」
「あなたのせいではありません。
父上は…オレを、里を守るために自ら命を天に捧げたんです」
「でも…!」
「少しも、といえば嘘になるかもしれない。
だが…今のオレにはあなたがいる。
あなたさえ、離れなければオレは辛くなどない…この呪印は、あなたと居られる証なんだ」

小さな墓石が揺らいだような気がした。

****

後日、さり気なく自分が告白していることに気づいたネジはちょっと慌てる。
でもヒナタ様は悲しんでたし、それに全然気づいていないという。
ただ兄さんは励ましてくれたんだな、と。

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