4.私の居場所
「宗家の落ちこぼれ」
ずっと、ずっとそう言われ続けてきた。
微かに守られてきた次期宗家跡目の肩書きは妹に奪われ、普通の忍として任務に就いた私。
いつ勘当されるのかわからない恐怖、いつまでたっても見つからない存在意義。
私の心は…今にも押しつぶされてしまいそうだった。
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ナルトくんがいなくなってから、私の修業をする時間が増えた。
…憧れのナルトくんに、一歩でも近づけるようになりたかったから。
そして、大好きなネジ兄さんの手を少しでも煩わせないように、と。
ただそれだけの為に、毎日血が滲み出すまで修業を続けた。
あまり良くないことだってことは分かってる。
でもこうでもしないときっと、足りないままなの、見つけられないままなの、掴めないままなの。
私に無い、その「何か」の存在を、「私の居場所」が。
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その日は夕方に任務が終わった。
帰り道に向かうもう随分一緒に過ごしている班員と別れて、私はいつもの演習場へ。
そして、いつも使っているその丸太に掌底を打ちはじめる。
血が滲み、手の感覚を失うまで。
何度も。何度も。
「はぁ!」
一度、単調だった手の動きを止める。
駄目だわ、まだ、こんなんじゃ、私は父上にも誰にも認めてもらえない。
(宗家になって…私が日向の運命を変えるには…ネジ兄さんを呪印から解放するには…)
──私が、宗家に居場所を作らなければ始まらない夢。
私が強くならなきゃ、終わってしまう夢。
ぐっと一度拳を強く握りしめてから、もう一度体制を立て直す。
そして…力いっぱいの掌底を打とうと、私は声をあげて丸太に腕を突き上げる。
そのときだった。
「ヒナタ様!」という、叫び声に近い怒鳴り声。
それと同時に、私の腕は捕らえられた。
「ネジ兄さん…?」
「キバとシノがヒナタ様を心配していて見にきたら…血だらけじゃないか!
何故ここまで…」
「居場所が……ないから」
「…?」
「宗家には私の居場所がないから…居場所を探してるの…作らなきゃいけないの」
私の居場所、どこを捜しても見当たらない居場所。
あとどのくらい強くなったらいいのかもわからない。
どうしたらいいの?
どうしたらナルト君の近くに行けるの?
どうしたらネジ兄さんの呪印は解かれるの?
色んな問いを何度も何度も繰り返した。
何度も、何度も、気が狂うほどに。
ネジ兄さんは、何度目かわからない問いかけのあと、私の頭を撫でて、小さく小さく呟いた。
「あなたがここにいる限り、オレはあなたを迎えに行く。
だから、もう一人で抱え込むな」
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Theme song「I'll Be Waiting/Lenny Kravitz」
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