2.宗家と分家


日向は2つに別れている。
はじまりの宗家、そして枝分かれしている分家。

私は生まれながらその宗家で、私の大好きな従兄、ネジ兄さんは分家だった。
あ…大好きというのは、決して従兄として、というわけじゃなくて。

…はじめは、ナルトくんが好きなんだと思っていた。
太陽みたいに明るいあの人のそばに行きたいって…何度も、何度も思った。

でも、気づいちゃったんだ。
私は一人でその場所に行きたいんじゃない、闇の中で苦しんでいるネジ兄さんと一緒に行きたかったんだ…って。
ずっと一緒に、仲の良い従兄妹とかじゃない、「ネジ兄さん自身」といたいんだって…。
中忍試験のあの予選、はじめて逃げることなく、ちゃんと兄さんと向き合うことができたあの日、私はそう気づいたの。

でも、私の願いはきっと、きっと一生叶うことはないんだろう。

だってネジ兄さんは分家で私は宗家だから。
私はネジ兄さんを閉じ込める「鳥籠」なのだから。
私はネジ兄さんから何もかもを奪う「罪」があるから。

私とネジ兄さんの道は、この大きな壁がある限り、きっと交わることはないんだろう。


だからもうネジ兄さんのためにも、私のためにも諦めたほうがいいんだって…私は何度も何度も自分に言い聞かせた。
でも言い聞かせるたびに、私の本当の心は騒ぎ出すの。

──この壁さえなければ、この壁さえ越えられれば、いいんでしょう?

どうしても変えられないものだなんて思ってるの?

だって運命は自分で捜して、築き上げて、変えて、そして切り開いていくものでしょう?

諦めて、立ち止まったら終わりだって、「私」はよくわかってるはず。

…と、いつの間にか少しだけ強くなった私が、目蓋の裏側で微笑むの。


許されないことだとはわかってる。

あの人からたくさんのものを奪ったくせに、まだ欲しいだなんて。
あの人をさらに縛り付けようだなんて。

でも、でも、もしも、もしも兄さんも、私と同じ気持ちでいてくれたら…少しでも、私と同じ気持ちを持っていてくれるなら…。
私は、この赦されざる罪を、生涯抱え続けて往ける気がするの。


「ヒナタ様」

部屋の向こうから、ネジ兄さんの声が聞こえる。
父上の修業の前に、私に挨拶に来てくれたらしい。
私は閉じていた目蓋と、障子を開く。

物語は、きっとまだはじまったばかりだ。

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葛藤と隣り合わせの恋心
こんな二人でいいと思う

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