「デュナメス、目標を狙い撃つ!」

コックピット上部に格納されていたスコープシステムを引き下ろし、接眼用モニターを覗き込んでいたロックオンは、その視界にテロ組織の操る三機のモビルスーツ、アンフを捉えていた。
アンフに向かってGNスナイパーライフルで粒子ビームを発射すれば、三機は吹っ飛んで破片を周囲に散らした。続いて接近してきた三台の人員輸送車両もアンフ同様に吹っ飛ぶ。
『全弾命中、全弾命中』
ハロが電車音声を響かせる。
その声に、やっと帰れると思った。同時に惺の顔が脳裏に浮かぶ。早く彼女の元へ行きたい、と、ただその思いだけを胸に抱いて。
「ミッション終了!離脱するぞ、アレルヤ!」
スコープシステムを格納しながら叫ぶと、「了解」と有線通信を介してアレルヤの返答が聞こえた。
デュナメスを乗せたキュリオスが加速していく。その中で、ロックオンは一人彼女の事を想う。
(こんなに会いたくなるなんて…俺も末期だな…)
アレルヤにばれぬよう、一人自嘲した。
が、その時、デュナメスのコックピットに電子警告音が鳴り響いた。
「なんだと…!!」
背後から大量の多弾頭ミサイルが迫ってくる。
数百という小ミサイルがデュナメスとキュリオスに牙を剥く。
「くっ!」
『敵機接近、敵機接近』
「くそっ!」
やっと惺に会えると思っていた手前、苛々が止まらない。
不安定な彼女の一番近くにいたいのに。安心させてあげたいのに――そんな思いが更にロックオンの焦燥感を掻き立てる。
「来るぞ!」
多数のミサイルを捉える。ロックオンは装備していたデュナメスのフルシールドを閉じて襲撃に備えた。キュリオスも防御体勢をとる。

絶え間無く降り注ぐ攻撃。

「さっさと帰ってシャワーでも浴びたいぜ……」







「ミッションプランをB2に移行する」
「了解。エクシア、外部迷彩皮膜解凍。ミッションを開始する」
「同じくベリアル、ミッションを開始する」
ガンダムヴァーチェに搭乗しているティエリアからの通信に、刹那、惺、と返事をする。
惺は外部迷彩皮膜を解凍しながら渇いた唇を舐める。その行動は見様によっては艶かしくも見える。
「行くか、ベリアル…」
静かに呟いて、操縦桿を握り締める。
(プランB2――エクシア、ヴァーチェ、ベリアルの投入及びデュナメスとキュリオスの離脱ルートの確保…)
惺は溜め息をついた。
頭の隅っこにロックオンの顔が浮かんで離れない。
あの、夜空の下で、全てを教えてくれた。あの優しい表情が、じわじわと心臓を締め付ける。
(何だろうか、)
物凄く、彼に逢いたいと、確かに思った。
惺は慣れた手つきでGNソードを構える。
「ベリアル、目標を殲滅する」
(早くシャワー浴びたい)
知らず知らず想いを馳せていた彼と同じことを思う惺。
『エクシア、目標を駆逐する』
ベリアルの横では、エクシアもGNソードを展開している。
散って行く破片を見ながら、刹那には負けられないな、と不謹慎な事を考える。
が、
(なんだ…っ!!!)
次の瞬間、エクシアとベリアルのコックピットに電子警告音が鳴り響いた。
ミサイルの噴煙の隙間から、多弾頭ミサイルから発射された小ミサイルが三人に襲いかかる。
「…――うそだろ…!」
避けきることも、撃ち落としきることもできず、エクシア、ヴァーチェ、ベリアルは、デュナメスとキュリオスの時と同様にミサイルの豪雨に飲み込まれていった。

『此方に来てよ、“   ”』


一瞬だけ、彼女の声が聞こえた気がした。




2011.04.23
2013.01.03修正



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