最近、惺が無理してる気がするの。なんで?って言われても何と無く…と答えるしかないけど。ただ惺の瞳が哀しい。
惺、以前に比べてよく感情を表すようになった。勿論それは嬉しい。だけど、その分、他のみんなに気付かれないように仮面を被るようになった。
私達、惺に我慢させるために心を開かせたんじゃないよ。
我慢しないで、全部共有したいから。

ねぇ、惺、
何時になったら、気付いてくれるのよ。

「ごちそうさまーっ」
「あら、クリス、何処かに行くの?」
スメラギさんに訊ねられた私はニッコリ笑った。
「惺のところ!最近元気ないから、一緒にショッピングしようと思って」
「女の子同士でショッピング…いいな」と、ロックオンが微笑みながら呟く。女の子の特権なんだからね。ロックオンはこの間惺とデートしてたんだから今日は私に譲ってよね。
「では、失礼しまーす」
先に出ていった惺とティエリアに続き、その場を後にする。向かう先は勿論惺の部屋。「ショッピングに行こう?」と誘ったら、絶対びっくりするだろうな。そして「面倒臭い」って眉間に皺を寄せるの。
唖然とする惺の表情を想像しながら目的地の扉を開く。あ、ノックするの忘れちゃった、とか思ったけど惺だし別にいいかな。

「惺ーっ、一緒にショッピング………」

私の言葉は目の前の光景に遮られた。




「きゃああああああああっ!!!!!」





「ど、どうしたのよクリス!」
スメラギさんが問い詰める。叫びながら戻ってきた私を心配そうに皆見ている。早くこれを話したい。だけど喉がヒリヒリして上手く声が出ない。私は呼吸を整えながらやっと言葉を紡いだ。
「惺と…っ、ティエリアがっ…!惺の部屋のっ、ベッドで…っ!!」
息が続かない。一旦喋るのを中止。深呼吸する。落ち着け私!
一方、皆は私の科白にそれぞれの反応を示す。
刹那は固まっているし、アレルヤは真っ赤。ロックオンは青白くなって「まさか…嘘だろ…」と呟く。
私は漸く落ち着いてきた。あんな光景、滅多に見れない。脳内に記憶するだけじゃ足りない。
「誰かっ!カメラを……っ!」
「クリスティナ!カメラなんか使っちゃ駄目よ!二人の邪魔をしたら…!」
「あの二人ってデキてたんですね!!」
「朝っぱらからお熱い…」
「ちっ!違うってばぁ!とにかくっ!みんなも来てよ!」
何やら誤解をしている皆に叫ぶ。口で言っても無駄だ。これは連れて行くしかない。私は皆を引き連れて再び惺の部屋に向かった。







「……こ、これ……!」
またもノック無しで入った惺の部屋。その光景を見た一同は息をのんだ。
王留美の趣味なのか否か、元々部屋の内装は貴族の屋敷を彷彿させる洒落たものだった。各部屋がそれぞれの色に合わせてデザインされている。特に、惺が使用している部屋は白で統一されていた。インテリアの雰囲気も相俟って何処か儚げで幻想的な部屋の中。
その一角の、落ち着いたベッドの上に、問題の光景は広がっていた。
「これは…」
最初に言葉を発したのはロックオンだった。


「そ…添い寝…」


捉えたのは、惺とティエリアがひとつのベッドで寄り添いながら寝ている姿だった。
見様によっては天使達の昼寝(時間帯的には二度寝)のようにも見えなくもない。
「どうして…珍しい…」と言うアレルヤの呟きに、一同はウンウンと頷いた。この組み合わせに皆は違和感を覚えたようだった。
そんな皆を見詰めながら、クリスティナは思う―――皆、分かってないんだよね、と。


『…君が生きてて…良かった』
『ティエリア…?』
『……温かい…』


クリスティナは、惺が溺れかけ、濡れて帰ってきた日の事を一人思い出して微笑んだ。
二人とも、何も興味無くて無関心そうに見えて、本当は皆を一番見ている。
そして優しい心を持っている。
勿論、惺とティエリアは皆に優しいけれど、二人が一緒に居るのを見ていると、その間に友情以上の何かを感じてしまう。
愛情とはまた違う。確かに、愛情も含まれていると思うが、あれはまるで、二人は一心同体であると言っているように感じた。
片方が傷付けば、もう一方も傷付く。逆も然り。片方が幸せならば、もう一方も幸せなのだ、と。
「………………。」
わーわーと騒ぎ始める一同。その時、刹那がベッドの端に落ちている何かを発見した。
「…タオルが…」
その科白に、スメラギが「もしかして」と、近付いて確かめる。額に手を当てた瞬間、彼女の眉間に皺が寄った。
「この子…熱があるわ…」
「じゃあ、ティエリアは惺の異変に気付いて…?」
「そのまま寝ちゃったようね。或いはこの子が引き止めたか」
そう言って、スメラギは惺の頬をつつく。
「…しっかし…美男美女が揃うと、破壊力あるなぁ…」
「確かに…」
リヒテンダールの言葉。ロックオンは大きく頷いた。
「でも、二人とも性格は不細工だけどね」
「言えてる」
スメラギの科白に一同は笑みを浮かべた。何故か温かい気持ちになった。

「まったく…、何も知らずに無防備に寝やがって…」

「まあ、いいんじゃない?たまにはこういう日があっても」




2011.02.22
2012.12.27修正



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