走馬灯、と言うのだろうか。
火花が散る、キマリスの暗いコックピットの中。
虚ろな瞳のまま、俺は頭の中で愛しいあいつの姿を追った。

幼い頃からずっと一緒にいた。マクギリスと、カルタと、あいつと、四人で、いつも、一緒にいた。
俺たちセブンスターズの一族とは違って、あいつだけが孤児院出身で、大人の奴らには散々「あんな泥臭い子供とは関わってはいけない」なんて言われてたけど、俺たちはしつこくあいつに会いに行ったっけな。
その度に、眉間に深いシワを刻んで、「帰れ」って追い出された。
(ああ、会いたい…)
そこまで考えて、涙が一筋。
あの愛しい日々は幻だった。
思わぬ親友の裏切り。マクギリスは最初から俺たちを利用するつもりだったんだ。
(あいつは…、無事だろうか…)
俺とカルタと同じように、殺されたりしないだろうか、それだけが心配で、死ぬに死ねない。
「俺…、成仏出来ないかもな…」
こんな時だと言うのに、不謹慎に苦笑した刹那だった、「マクギリスーーーッッ!!!」と叫び声が聞こえる。コックピットに空いた穴の向こうにマクギリスの機体と、もう一機、青い機体が見えた。
青空と同じ色をしたその機体。
中に乗って操縦しているのが、誰なのか、何の為に、此処に来たのか、不思議と、俺には直ぐに分かった。

「…――ガエリオだけじゃない…ッ!!君の事だって、救いたかった!!!」

切羽詰まった声。
瞬間、俺は、シンのずっと叶えたがっていた願いが何なのか、分かってしまった。
ああ、シン、
お前は、俺と、マクギリスの為に、ずっと、ずっと――…

ゴン!!!と、キマリスにシンの操縦しているシュヴァルべがぶつかったのが分かった。
大きく揺れる機体。
ああ、シンを守ると、誓ったのに、頭がガンガンして身体がちっとも動かない。
おさまらない涙。
情けない。
マクギリスがコックピットから出て来て俺に銃口を向けたのが見える。
「友人としてのせめてもの情けだ。ガエリオは、君の目の前で、直接、私が手を下そう」
(ああ、)
ゲホ、と、血を吐き出した。
「俺、は…、」
まだ、死ねない。

…―――シンに…、



『…―――私にも…、愛してるって…っ、!ちゃんと…っ、言わせて―――…』
「…―――シンに…、愛してるって…っ、!ちゃんと…っ、伝えてない―――…」




(…え、…?)
今の、光景は。

泣き崩れるシン。
刹那、たくさんの映像と記憶が俺の中に入り込んで来て。
(頭が、痛い…っ、!)

痛みを堪えてゆっくり見上げると、酷い顔をしたマクギリスと目が合った。

ゆっくりと、トリガーが引かれて、

パアン、と、乾いた銃声が響く。

「…(ああ、)」

思い出した。

このシルバーリングは、


俺じゃない俺がシンにあげたものだ。




2016.05.21

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