ダンッ!と、例の古書屋の扉を乱暴に蹴り開けた。
店主は、急に店の中に殴り込んで来た私の姿に、恐れをなして「…っ、!!005…!!」と後ずさる。私が何を考えているのか分かったのだろう。「わ、悪かったって!!こっちだって商売だったんだよ〜!!」と弁解し始めた。
私は無表情で見下ろす。
冷たく「うん、分かってる」と吐き出した。
「ついでにモビルスーツを用意してない事も、全部分かってる。まあ、仕事なら仕方ないよ…。仕方無いけどね、」
ゴンッ!!と、カウンターに踵を落とした。
「やっぱり腹立つもんは腹立つ」
物分りの良い店主は、その行為が脅しだと直ぐに理解出来たらしく、「まっ、待ってくれよぉ〜!!何でも好きな武器をくれてやるから今回は許してくれよぉ〜」と懇願する。
「ライフルとバイクが欲しい」
「ライフルは兎も角バイク?!ねえよ〜!!」
「あるじゃん。おじさんのコレクションのハーレー」
「は!?冗談よせよ005!!」
「冗談に見える?」
ニッコリと微笑んで、眉間に銃を突き付けた。
こちとら大事な人達の命がかかってるんだ。
優しい事なんて言ってられない。
おじさんは「この鬼!!」と吐き出してガレージの鍵を投げた。
何とでも言えばいい。
私は、ガエリオを救う為なら、鬼でも、悪魔でも、死神でも、何にでもなる。

「じゃあ、バイク、有り難くもらっていくね」
ニッコリ笑う。
次はモビルスーツをどうやって手に入れるかだ。
おじさんは「工作員は敵に回すもんじゃねぇな」と力無く呟いた。今更遅い。
まだ虫の居所が悪いから、腹いせに一番高いバイクをもらってやろうと思う。



■■■



シンの姿を見なくなって数日。
この短期間に色々な事があった。カルタが亡くなり、鉄華団との本格的な戦いが幕を開けた。
戦いの最中だからだろうか。それとも、あいつが傍に居ないからだろうか。よくこの胸元のシルバーリングに触れている気がする。
(シンは…大丈夫だろうか)
キマリスのコックピットで思う。
あいつは、昔から一人で何でも片付けようとするきらいがある。正直、物凄く心配で堪らない。
カルタを救えなかった事もあって、シンまで俺のもとから居なくなってしまったらどうしようなんて不謹慎な事が頭の中を何度も過ぎった。
(いや、信じるんだ、)
コックピットから遠くを見据える。

『…なんかお前、最近様子がおかしくないか?』
『…気のせいだよ』
『ああ、そうだ、明日、マクギリスがお前の所に行くって言ってたぞ。なんかお前の好きそうな本を手に入れたんだと』
『……。』
『しっかし、お前ら二人も相変わらずだよなぁ。幼い頃にマクギリスから文字を教えて貰ってからずっと本の貸し借り続いてるし。よくやるよ』
『…もう要らない』
『ん?何だって?』
『マクギリスに言っといて。もう、必要無いって』

(思い出したくない過去だ)
その翌日、シンは俺達の前から消えた。
何も言わず、俺も、あいつの僅かな違和感に気付けなかった。
(でも、今は違う)
あいつは、帰って来ると約束してくれた。
何も言わずに俺達の前から姿を消した、あの時とは違う。
ちゃんと、約束したんだ。

願いの為に、離れた場所で頑張っているシン。
彼女に負けないように、俺は、ギャラルホルンの未来の為に戦おう。

俺と、アインで、必ず。
何としてでも、鉄華団を、俺達の手で討つ。

「ギャラルホルンの未来を…!!俺達の手に!!」

俺は、もう一度、胸元のシルバーリングを握り締めた。



2016.05.19

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