「ほわぁ、新一年生だぁ…」
窓から見慣れない新しい顔を見ていく。
初々しいその姿。一年前の自分達はあんな感じだったのかな、なんて考えるとちょっと笑えてきた。
クラスを確認して、「遙と真琴とまた一緒だ!やったぁ!」なんてはしゃぎ回って。
「…懐かしいな」
「ね!」
いつの間にか、隣に並んで一緒に新一年生を見詰めていた遙。彼の言葉にニッコリと返すと、「あれ」と一人の女の子を指差し、
「一年前のお前にそっくり」
「うっそだぁ!私あんなジャンプしてなかったよ」
「そうだな。チアリーディングをやっていた分、お前のほうがジャンプ高かったな」
「そう言うことじゃなくて!」
遙の言葉に反論する。小さく笑った彼は確信犯だ。私をからかって楽しんでるんだろうな。
つられて笑う。
「ほら!あれは遙みたいだよ!皆クラス発表でドッキドキなのに、一人だけ妙に冷めてる所が!」なんて、暫く攻防が続く。
「…ねぇ、遙…」
一通り言い合った後、私は遙に向き直った。話すべきか、否か、朝からずっと悩んでいたの。
「なんだ?」と、優しく返してくれた遥をじっと見詰める。
「私ね、」
昨日、
凛に――…

「…――ねぇ、二人とも、お昼ご飯、食べよ」

私の言葉は、真琴の科白によって、飲み込まれてしまう。
真琴に「ああ」と軽く返した遥は、直ぐ様「悪い、さっきの続き…」と私に問うたけれど、一度折れてしまった気持ちでは言い出せない。
「ううん、やっぱ何でもない」と適当にはぐらかした。
私は兎も角、凛が帰ってきてることを遙と真琴が知らない訳がない。でも、二人が知っていたら私に何かしら教えてくれるはず。それをしないと言うことは、遙も真琴も、凛の帰国を知らないってことで…。
(なんで、すぐに皆に連絡くれないの)
モヤモヤと謎と気持ち悪さだけが残る。
(皆に、私に、会いたくないってこと?)
再会した時の違和感を思い出す。
凛は、オーストラリアに行って、変わってしまったのかもしれない。
(金髪美女とパコパコしすぎて性格がスレたとか)
冗談である。
でも、幻想は抱かない。人はどうとでも変わる。凛はそんな人じゃないはず、なんてはっきり言えるほど、私は真っ直ぐでもない。私だって、凛が居なかった数年で随分と変わってしまったから。
(皮肉にも、凛を好いている気持ちは変わることがなかったけれども)
「…帝?」
ぼーっと考え込む私を見て、心配になったのか、遙が声をかけてくる。
私は、ニッと笑って「あっ、ごめん」と軽く謝ると、彼の手を掴み、「早くお弁当食べよう!」と引っ張ったのだった。





「え!お弁当持ってきてないの?」
階段にて、私は問うた。
三人でお昼ご飯を楽しもうとしていたのに、まさかの事態だ。真琴が「これ食べる?」と、スルメイカを差し出すけれども、お昼ご飯がスルメイカって、成長期真っ盛りの男の子には足りないしキツイんじゃないかな、なんて横で密かに苦笑いを浮かべた。
「私の半分あげよっか。あ、でもやっぱ購買で買った方がいいかな」
遙の顔を覗き込んだ瞬間だった。
「久しぶりーーー!!」
(ん?)
「ハルちゃん!マコちゃん!ミカドちゃん!」
(え?)
「ハルちゃん?」
「マコちゃん?」
「ミカドちゃん…」
三人で確認。顔を見合う。

「「「渚ぁぁぁぁぁ!!?」」」

それは、まるで、神様が仕組んだかのように。



2014.01.30



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