「交通費タダって結構デカイよね!」
あっちゃんの大きな声が響く。私達はついに無人島(正確には違う)に来てしまったのだった。
何かの拍子にチア部だけ行けなくならないかなぁ、なんて密かに願っていたものの虚しく、何事もなく当日を迎え、今に至る。
因みに今、私達は暫く寝泊まりする民宿に荷物を置きに行っている最中だ。コウと天方先生が借りている民宿とはちょっと離れているが、少し人数が多くても大丈夫そうなところを選んだのだ。
「笹部コーチにお礼しなきゃね」
何がいいかな、と問うが、「エロ本でいいんじゃないの?」と言う果てしなく適当な答えが返ってきた。あっちゃん、それ色々と酷い。
「そんなことより水着!あんた、ちゃんと持ってきた?」
「持ってきましたよ…」
出発する直前まであんなに煩く言われれば嫌でも持っていきますって。
リュックに入った例のブツを頭の中で思い浮かべる。
半ば無理矢理だったとはいえ、自分で買っておいて、使う時が来なければいいのにと必死に願っていたが、あっちゃんは私にどうしてもそれを着せたいらしい。
本当に彼女は私にビキニなんか着せてどうするんだろ。何もいいこと無いのに。
「よーし、いっぱい遊ぶぞー。」
「私、ビーチバレーやりたいな」
「お?後でやる?」
「そーだねー」
テンションだだ下がりの私を置いて、どんどん話が進んでいく。
きっと私も強制参加なんだろうな。
「はあ、」
気付かれないように小さく溜め息をついたのだった。







「…疲れた…遊んだ…」
結局、海を泳いでトレーニングをしている水泳部を他所に、ずっとビーチバレーをしていた私達。もう日は随分と傾いていて、辺りは僅かにオレンジ掛かっている。
「帝ー、ビーチバレーあんたが負けたんだからジュース買ってきてよー」
「……。」
あっちゃんの容赦無い科白が飛んでくる。海のパワーなのか、私以外の皆は凄くゲームに乗り気で、やる気満々だったのだ。やる前から気持ちの問題で負けてる訳だから、勿論ゲームにも勝てる訳が無く…。
「分かりましたよ…買ってくればいいんでしょ…」
ニヤニヤしながら此方を見てくるメンバーに苦笑しながら軽くパーカーを羽織って近くのコンビニまで向かった。
「ほら〜!走って走って〜!」
「早く帝〜!」
「喉乾いて死んじゃう〜!」
(こっのぉ…!!!!)
わざと大声で言ってくる皆に、内心で悔しがりながら私は全力疾走した。




2014.07.21



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