渚の爆弾発言のせいで、合同練習に水泳部の皆がやって来る事になってしまった。止めてくれると思っていたコウまでも「行きたい!行きたい!帝ちゃんのチアリーディング姿見たこと無いし!」と乗り気である。そして言うまでもなくチアの部員は「水泳部?オッケー!オッケー!美男美女はウェルカムウェルカム!」と言う感じで、私の意見を聞いてくれる人は誰も居なかったのだ。
(…憂鬱だ…、)
チアリーディングをやっている姿なんて、遥が中学時代に一度競泳を辞めて以来知り合いには見せていない。幼なじみとは言え、遥と真琴がわざわざチアを見に来るなんてここ数年無かったし、そんな二人が見に来ると言った中学最後の大会は――…
(だめだ、思い出しちゃ…)
「取り敢えず、合同練習は今月の下旬辺りにぶっ込めばいいかな…」
カレンダーを見詰めながら呟く。今は合同練習の方より来週の予定の方が優先だ。
「帝ー、これなら来週大丈夫そうじゃない?」
向こうからあっちゃんの声が聞こえる。私は「そうだねー」と返した。
来週は野球部の新人戦があって、それの応援にチア部も駆り出されるのだ。取り敢えず吹奏楽部との合わせ練習も問題無かったし、大丈夫かな。こう言う時に部員が優秀だと助かるね。
「まあ、新人戦の応援はバトン無しのポンポンだけだし、簡単だからね」
いつの間にか傍に来ていたあっちゃんが横でそう言って笑う。
「じゃあ、あっちゃんからのオッケーも出た訳ですし、今日はこれくらいにして、終わりますかー…。みんな集合ー」
終わりにちょこっとミーティング。今後の予定をさらりと確認して、本日の部活動は終了した。

「帝、帰りどーする?」
「んー、遥と真琴が居るか見てくる」
「あ、そう?じゃあ、私はバスの時間あるし帰るわ。帰り気をつけてね」
「うん、ありがと。水泳部の部室行ってみる。じゃあね」
「また明日ー」
手を振ってあっちゃんと別れると、駆け足で水泳部の方まで向かった。







「あ、いたいた。おつかれさまー」
遙と真琴の姿を発見。水泳部もちょうど終わったらしく、部員達は今から着替えに行くようだった。
「帝ちゃんもお疲れ様です。遙先輩と真琴先輩ならもうすぐで来ると思うよ」
コウの科白に「ありがとう」と返し、二人が着替え終わるのを待つ。
「三人で帰るの久しぶりじゃない?最近帝ちゃん忙しそうだったし」
「確かにそうかも。来週、野球部の新人戦の応援あるし…」
「新人戦の応援もするんだ?」
「うん。大会と違って結構面白いよ」
誰かを応援するって良いなって思う。他の部員はどうか分からないけど、私は、小さい頃、水泳をやっている皆を応援していた事もあって、やっぱり、誰かを応援することが好きなんだなってこう言う時に実感する。
コウは小さな声で「来週、野球部の新人戦か…」と、反芻する。誰か気になる男子でも居るのだろうか。まあ、野球部もなかなか良い筋肉してる人たくさん居るしね、と自己完結。

「あ、帝ー!お待たせー!」
「遅いよ真琴ー。遙は?」
「すぐ来るよ。今渚に捕まってる」
荷物を持ってこっちにやって来る真琴。ふわりとプールの香りがした。塩素かな?よく分からないけど、私は嫌いじゃない。
それに、この匂いを嗅ぐと思い出す。
大好きだった、否、今でも大好きな彼のバタフライを。
(…もう一度…、見たいな…)

「…帰ろうか、」

真琴の声に、誤魔化すように小さく笑った。



2014.06.17



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