「…――ちょっと帝!!これはどう!?」

あっちゃんの大きな声が響き渡る。こっちを見ている彼女の右手には黒いビキニ。左手には真っ赤なビキニ。しかも、どっちも私用に選んだらしい。似合う似合わないは置いといて、彼女は私があれを着ると思っているのだろうか。「うん、いいんじゃない?」と適当に返事をしたあと、人知れず溜め息をついた。
私達は今、水泳部の皆と一緒に水着を買いに来ている。水泳部は競泳用水着を買いに。私達は海水浴で使う用に。(でも水泳部の皆はもう既にファッションショーの様になっているけど)
「ハナちゃんは水着決まった?」
隣に居たハナちゃんに声をかけると、彼女は「うん、ピンクのビキニ」とサラリと答えた。え、なにそれ。ビキニ流行ってるの?違うよね。何で皆そんなにビキニに意欲的なの。
「帝も早く買ってきなよ」と何故か急かされて「あ、うん」と答える。
ハナちゃんのもとから去った私は、一人で水着探しを再開。ぐるぐる回ってぐるぐる回って、また元の場所に戻ってきてしまった。
「あ、コウ」
「帝ちゃん!水着決まった?」
元の場所に戻った私は、げっそりした表情のコウの元にやって来た。買い物に付き合っている彼氏のような顔だ。
「ううん、まだ決まってない」
苦笑いで告げると、彼女の隣に座った。コウとは昔から仲が良い。凛の後ろにくっついていたから、自然と仲が良くなって幼馴染みのようになっている。凛がオーストラリアに行ってからは連絡もあまり取らなくなっていたが、彼女が岩鳶高校に入学してからはすんなりと以前の様な関係へと戻った。
「帝ちゃん、知ってる?いま、鮫柄水泳部が、ここに…」
「え、鮫柄水泳部が…?」
「御子柴部長を見掛けたの」と続けた彼女の顔はあんまりよろしいとは言えない。
きっと彼女は気にしているのだろう。自分の兄とその友達の関係を。そして、私のことも。
「じゃあ、凛も、来てるよね」
声が震えてないだろうか。
コウは「多分」と言って黙り込んでしまった。

「私…、水着、選んでくるね」
いたたまれなくて、逃げる様にその場から離れた。凛に会いたくない。もう、傷付きたくない。あんな凛、見たくない。




2014.04.17



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