「ねぇ!!!!海!!!!行こうよ!!!!」

あっちゃんの大きな声が教室に谺した。

凛と色々あってから数日が経った。私はあれ以来凛と会うことは無かった。彼に酷く掴まれた手首も、今では元通りになっていて、気にすることもなくチアを続けている。
一方、遥達は水泳部を設立して、鮫柄に居る凛に何とかして会おうと言うことになったらしい。顧問、部員、マネージャーも無事にゲットし、これから本格的に練習をするとのこと。
まるで去年の私達を見ているようだった。チア部を設立する時、私達もこんな感じで一生懸命だった。

「ねぇ、聞いてる?」
あっちゃんが再度私に話し掛けた。
私は「良いんじゃないかな?」なんて適当に返した後、他の皆にも目配せして確認する。
水泳部を設立した遙達を見ていたあっちゃんが、急に海に行きたいと言い出したのは数日前のこと。「見てたら私も泳ぎたくなっちゃったの!!」とのこと。
チア部の皆で海で遊ばないか、と毎日のように言っている。
「でも私水着なんて持ってないよ」
隣の子(通称ハナちゃん)が困ったように言う。実は私も水着持ってない。

「じゃあ、一緒に買いに行く?」

そんな声が聞こえたのは後ろからだった。女子のみの会話のなか、突如入ってきた低音に振り向けば、そこには相変わらずニコニコしている真琴の姿。
「俺達も水着買おうと思っててさ」
そして「玲がブーメランじゃない水着を買うって言っててさ」と続けた。真琴の表情は本当に楽しそうだ。やっぱり前のように水泳が出来るからなのだろう。
「ねぇ、帝、行こうよ」
あっちゃんの声。「橘もこう言ってるんだから」と懇願している。
「…じゃあ、行こっか、水着買いに」
「ヨッシャ!!!」
ガッツポーズで喜ぶ彼女に、もう少し女の子らしくしようよ、なんて思ったのは内緒である。
「決まりだね。ハルには俺が言っておくよ」
まるでそうなることを予測していたかのように見詰めていた真琴が私に言った。
「うん、よろしく」

この時は、まだあんなことになるなんて、考えもしなかった。




2014.04.16



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