そう。それこそ、生まれた瞬間からずっと一緒だったんだ。
イノベイドとして存在し始めたその瞬間から、僕の隣はずっと彼女だったんだ。僕達は二人でひとつだった。この言葉に嘘偽りなんて無かった。そして、これからもずっと彼女は僕の隣に居るのだろうと、当たり前のように思っていたんだ。
だけど、忘れもしないあの日。

『…――やはりシェダル・レジェッタは失敗だった。無理矢理女に造るからこうなったのかも知れない』

『…――今からでも間に合うか。中と外を中性に変更して、意識体を一時的に…』

『…――ああ、これは…』



『破 棄 す る し か な い。』



意識や入れ物を弄られ続けた彼女は、何もかも分からなくなって使い物にならなくなった。声すら出ない。視線はずっと遠くにある。呼んでも呼んでも、此方を振り向く事も無かった。彼女は僕の隣から引き離された。造られた存在だとしても、僅かにあった僕達の意志に反して、ブツリ、と紐を千切るように。僕は生かされて彼女は捨てられた。あれからずっとずっと、僕は彼女を探していた。
脱け殻でもいい。死体でもいい。ただ、彼女が隣に居るだけで、この息苦しさは直ぐに無くなるんだと。

そして、僕は見付けた。

生きている彼女を。
動いている彼女を。
声の出る彼女を。
きちんと目線の合う彼女を。


「…――会いたかったよ、シェダル…」


長い長い時を越えて、僕達は再びひとつになったんだ。
もう、絶対に手放さない。







最初は鏡を見ているのかと思った。真っ直ぐと此方を見詰めるその瞳。僅かな違いは在れども、自分と殆ど同じと言っても良い程の容姿。その、全く同じ唇が、私に向かって微笑んだ。
…――会いたかったよ、と。

はて、私は目の前の彼に会った事があっただろうか。如何せん私の記憶は曖昧過ぎて分からない。
「あの…」
「僕が分かるかい…?いや…分からないよね…」
目の前の彼は微笑んだ。
「僕はリジェネ・レジェッタ。君を迎えに来たんだ」
「迎えに、きた…?」
ただ彼の言葉を繰り返す。
突然現れた変化に戸惑いを隠せない。リジェネ・レジェッタ、私と同じ名を語った目の前の人物は、ゆっくりと手を差し出すと、再び微笑んだ。何故だろう。その微笑は、確かに私を安心させた。
記憶なんて無いけど。
会って数分しか経って無いけど。
信用出来るかなんて分からないけど。

「…―――行こう、シェダル。」

その優しい科白は、確かに私の心臓を貫いた。


嗚呼、やっと孤独から解放されるの。




2013.04.17


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