「「「ハッピーバースデー、ロックオン!」」」

そんな科白と共にクラッカーが弾ける。ぱん!と鳴り響いた音にびっくりした後で、漸く今日三月三日が俺の誕生日だと思い出した。最近忙しいから忘れてた。
「ありがとう、みんな」
ニコニコと笑いかけてくる皆を見て、俺も笑顔を浮かべる。やばい。凄く嬉しい。
が、
「…惺は…?」
一番祝って欲しかった愛する女性が居ない。思わず皆に問うた瞬間嫌な空気が充満した。ま、まさか、惺、俺の誕生日を忘れて何処かに行っちまったのか…?
愕然と立ち竦む。恋人から祝ってもらえないなんて、どんな誕生日も一気に嬉しくなくなる。ニコニコと浮かべていた笑顔は徐々に引きつった笑いに変わる。皆があたふたし始めた。
「ま、まあ、惺の事は忘れて、ケーキでも食べましょう!」
ミス・スメラギの言葉にムッとする。惺を忘れてケーキを食べるなんて俺には出来ない。我が儘だと言われても構わない。俺は惺も一緒にケーキを食べてくれなければ全然嬉しくも楽しくもない。
そんな気持ちを皆は察したらしい。近くに居たティエリアが「仕方無い。あれを持ってくるしかないな」とミス・スメラギに告げた。
「そうね。ロックオン、ちょっと待ってて」
「プレゼントがあるの」と言って指を差す。その先を視線で辿ると、有り得ないくらい大きな箱があった。
「はぁ…?!」
思わず素っ頓狂な声を出してしまった。でかすぎる。俺の腰くらいまである。一体何が入ってるんだよ。
眉間に皺を刻んだまま、箱のリボンを解いていく。するっ、とリボンを外して、その大きな蓋を開けた次の瞬間、

―――閉じた。

(いいいい今のは幻覚か?!)
ばっ、と顔を上げて皆の顔を見据えた。本気か?マジなのか?
ミス・スメラギとアレルヤがニコニコ此方を見ている。いや、これは本気だな。
震える両手で再び蓋を開ける。
中には、

純白のウェディングドレス

を、纏った惺が入っていた。

「っ、…」
まさに絶句。
箱の中の惺は、両手両足を拘束され、口にはガムテープを貼られている。「ん"〜っ!!!んん〜っ!!」と涙目で苦しそうに訴えている。取り敢えず、可哀想だからガムテープだけ取ってあげることにしよう。
「ぷはっ!な、何なんだよ一体!!怒るぞ!!」
もう怒ってます。惺さん。
流石に今回はポーカーフェイスでいられなかったようだ。
「惺。貴女はロックオンへのプレゼントよ」
「は?!なんでおれ?!」
ガタガタと箱の中で暴れる惺。しかし全くの無意味だ。それより暴れたせいで裾が際どい。真っ白な素肌と真っ白なウェディングドレス。今更ながら目の前の惺は一段と綺麗だ。心臓がばくばくしてくる。
「おれだって、ロックオンの誕生日の為にプレゼント用意してたのに、皆が寄って集るから…っ」
きっ、と睨み上げる。何だかそんな彼女が可愛く思えてきた。
抵抗の出来ない彼女を良い事に、頭を撫で撫でしてやる。惺は恥ずかしそうに身を捩った。
「…このプレゼント、本当に貰って良いんだよな?」
「ええ。ご自由にどうぞ」
「な"っ?!スメラギさん…っ!!」
今度は惺が絶句。残念ながら、今回は彼女の味方は一人も居なかったようだ。
「さ〜て、俺の部屋に行こうか、惺」
箱の中から、ヒョイ、と抱き上げる。「ありがとな、みんな〜」と軽く告げて、そのまま部屋まで持ち帰り。
「ちょっ!!!お前ら覚えとけよ!!!」
そんな捨て台詞と共に。

最高の誕生日プレゼント、美味しく頂きました。



Happy Birthday Lockon Stratos!
2013.03.03

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