静臨前提双子臨



新宿、某マンションの一室。新宿の街が見下ろせる大きな窓があるその一室には妙な雰囲気が漂っていた。気怠げな、それでいてどこか甘ったるいような、そんな雰囲気が。
リビングには人影は見えず物音一つしないため一見、誰もいないように感じるがよく耳を澄ますと僅かながらに規則正しい寝息が聞こえてくる。─その寝息をたてている人物の正体はこの部屋の主なのだが。

聞こえるのは、静かな寝息のみという穏やかで平和な空間。しかし、それもつかの間。バタンと玄関が開く音を合図に穏やかで平和なんて文字は呆気なく崩れ去った。

「やっほー!イザ兄っ、遊びにきたよー!」
「…訪(お邪魔します)…」

軽快な声が静かだった部屋に響き渡った。インターホンを押すこともなく玄関を開いたこの二人の少女はずかずかと遠慮なくリビングへと足を進ませていった。

「あれ、イザ兄?いないのー?」
「…探(探してみる)…」
「いないだなんて、おっかしいなぁー…」

いつもと違う部屋の様子に気付くと、少女らは首を傾げながらも目当ての人物を探す。人の家だというのにも関係なしに次から次へとドアを開いていった。すると、ある部屋のドアを開けたとき眼鏡をかけたおさげの髪の少女が声をあげた。極力小さな声で。

「ちょっ、クル姉クル姉っ、こっちきて!」
「…何(どうしたの)…兄(イザ兄は)…?」

クル姉と呼ばれた少女は眸をキラキラと輝かせている少女のもとへ言われるがままに近付いていった。

彼女が開いていた部屋は寝室だった。中を覗いてみると、大きなダブルベッドがおいてありその上にはいま自分らが探していた人物がいた。なんとも、あられもない姿で、そこに。

しかし、二人は慣れたように、いや寧ろ嬉しげにすやすやと寝息を立てる彼に寄っていく。彼は余程疲れているのか起きる気配はない。おさげの少女──舞流は、ふと彼の枕元に落ちている見覚えのある蝶ネクタイを見つけた。そして、眠っている自分の兄に視線を移す。彼は、だぼだぼで肩の位置もおかしい明らかにサイズの合っていない白いワイシャツ一枚だけしか纏っておらず、そのワイシャツの裾から簡単に折れてしまいそうな細っこい素足が露わになっている。少しだけみえている太腿の内側には生々しい赤い痕が点々とついており、彼の穏やかに眠るそのいま閉じられた眸の端には涙のあとが残っていた。そして、まわりには脱ぎ散らかされた服。
誰がどうみようと、情事後にしかみえないだろう。

彼女たちもすぐに感づいた。いまはいない、その相手も誰だかわかった。

状況をすべて理解した上で舞流はにぃっと唇を歪めた。そしてそれを隣にいる九瑠璃に向けた。
彼女の眸には蝶ネクタイ以外にもうひとつ、映っていたのだ。

「これは、襲ってっていってるようなもんだよね?悪いのはイザ兄なんだからっ、」
「…少…違(ちょっと違うような気がするけど)…」

小さく呟かれた姉の言葉を無視して、舞流は兄の上に跨るとベッドの上に投げ出されていたきっと先ほどまで使われていたのであろう手錠を彼の手首につけた。カシャリという金属音が更に興奮をまくし立てる。
九瑠璃が、もう何も言うまいと諦めたとほぼ同時に彼──臨也が目を覚ました。
ゆっくりと瞼を開いたが、状況がわからずただぼんやりと自分を見下ろす相手を見つめる。

「、ん…、舞、流…、っ!」
「イザ兄ったら、めちゃくちゃ感度いいね!もともとだったっけ?あ、それとも静雄さんのおかげっ?」
「…両(両方)…」
「ああ、そっかーっ!そうだね!両方かーっ」

やっと、頭がまわってきて相手の名前を口にした途端、びくっと臨也の身体が跳ねた。何故かというと。僅かに頬を赤らめた舞流がつーっと臨也の腰を撫でたのだ。
一気に覚醒した臨也が、珍しく焦りという感情を表情に出して叫んだ。

「お、まえらっ、何してんだ…!」
「え?イザ兄を襲ってる!」
「……」
「なんで襲ってんの!馬鹿なことしてないで、早くどい、っん、あ」

自分の上から退けるように指示しようとした言葉が甘い声に変わった。臨也がしまった、とは言わんばかりに唇を噛み顔をそらすと、シャツ越しに胸の突起を摘んでいた舞流がにやっと楽しそうに笑った。

「イザ兄ったら、顔赤ーいっ、可愛い!」
「…愛(可愛い)…」

そして、再び突起に触れると今度は唇を噛んでいるせいでくぐもった声が洩れてきた。

「ん、っ」
「もう、唇噛んじゃだめーっ。声きかせてよ、イザ兄」

すると、不満そうに唇を尖らせている舞流をみた九瑠璃が臨也の唇に指先を滑らした。予想外の行動に一瞬、気のゆるんだそのスキに九瑠璃は指先を臨也の咥内へと滑り込ませた。

「っ…!?」
「おおっ、クル姉、ナイス!ほーら、イザ兄?声出してね」

舞流が指で片方の突起を撫でたり抓ったりし、もう片方の突起をシャツにぺろぺろと舐めると指を入れられた口から喘ぎ声が洩れた。

「ん、は、ぁっ、や…、っ」

咥内にある指は九瑠璃のものな故にさすがに噛むことは出来ず、されるがままに喘ぎをこぼしていく。

(シズちゃんのだったら、思い切り噛んでやるのに…っ)

心の内でそう毒づくが、だからといって指だけが違う人物のものになるわけでもない。
そうしている間にも、舞流がシャツのボタンを外し始めた。臨也がそれを止めようとするが、手首には金属があら自由を奪っているため不可能だった。呆気ないほど簡単にシャツが開かれて肌が露わにされた。真っ白い肌に赤い痕がよく目立っていて、それがいやに扇情的だった。臨也自身は、先ほど緩い愛撫だけでゆるゆると勃ち上がりはじめていた。そんなところにも、情欲は煽られるばかりで。



指があるためにいつもはうるさい口から余計な言葉は飛んでこなく、ただせめてもと手錠の音がうるさく鳴っている。

「ねえ、イザ兄。これ、きもちよかった?」

片手で脇腹をなぞりながら、あるものをもう片方の手に持ちながら舞流が訊ねた。九瑠璃が指を引き抜くと、臨也が顔を青白くさせてそれをみつめた。

「、っ…ま、舞流っ、ふざけるのも大概にしなよ?」
「きもちよかったって訊いてるのに、」
「、舞流」
「答えてくれないなら、実際使わないとわかんないよねー?」

くるりと臨也の身体を無理やり反転させると、ぴとっと舞流は指先を後孔にあてた。舞流の細い指先がまわりをなぞっていくとひくりと後孔がふるえた。

「ん…ぁ…っ、やだ、やめろって…ば、っ」

恥ずかしさからか、うっすらと涙が滲んできながらも必死に止めようと試みるが、舞流はというと。

「さっきまで静雄さんのがはいってたみたいだし、それに」

イザ兄、痛いほうがすきだし、別に慣らさなくても大丈夫だよね?
と、無邪気な笑顔を浮かべてそんな残酷なことを告げた。
そんな舞流に、臨也はそういう問題以前に大丈夫じゃない、そう言いたかったがもはや言葉すらでない。
そして、舞流は先ほど手に持っていたもの─所謂、バイブというのを臨也のそこにあてがった。
ついさっきまで、同じものを違う人物にさんざんと使われたのにまた、しかも今度は妹に使われるだなんて。

(、なんで、しまっておかないんだよ…シズちゃんのばか!単細胞!)

しかし、いまここにいない人物の悪口をしかも心の中で言っても状況は変わらない。じゃあ、いれるよーっ、というやけに嬉しそうな声がしたかと思ったら、痛みと異物感。幸いにも、シズちゃんに出されていたのが潤滑油となって痛みは少なかったのだが、さすがに辛い。

「う、あぁっ、く、ぅ…っ、は…んっ」

すべて入ったかと思えば、引き抜かれて、また挿れられての繰り返し。まだ一度も触れられていないはずの自身は完全に勃ち上がり、既に先走りをこぼしはじめていて。しかし、達せるほどの刺激は与えられず、だが、妹たちの前で達するだなんて考えられないと朦朧とする頭で臨也を必死にまわして理性を保っていた。
どうせ、すぐ飽きる。そう思って。

「あ、っ、んん、う…、っひぅ、!」

もどかしい刺激を与えられている中、的確な刺激を感じた。おとなしく二人の様子をみていた九瑠璃が臨也の主張しているピンク色の突起を多少痛いくらいに抓ったのだ。痛いくらいに抓られたからといってもいまの臨也には痛みさえ、快感に変換してしまう。きゅう、と蕾が締まり、玩具をしめつけた。
自分の思いとは裏腹に飽きることなく、彼女らは手を動かしつづける。

「お前ら…っ、あ、いい加減に、っ…しろ、よ…!」

いい加減にしろという言葉にも甘ったるい嬌声が洩れてしまう己を臨也は恨む、がそれ以上にこんな身体にした恋人を憎らしく思った(とは、いっても普段も思っているのだが)。

「手前ら…何してんだ?」

そのとき。臨也が心で憎らしいと悪態を吐いていた相手が現れた。
手には煙草とプリンらしきものがはいっているコンビニの袋がぶら下がっている。











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