ぺろぺろとまるで犬のように円堂が俺の涙を舌で掬って舐めとる。いつだって俺が泣くと円堂がそうする。毎回やめろと言うけれど、聞き分けの悪い犬っころは言うことを聞かないで、せいっぱい舌を伸ばして、それから少しざらついた感覚を目尻に擦りつけてくる。その顔がなんとも不埒なもんなので、毎回俺の涙は止まってしまうのだ。いやはや性欲とは恐ろしいよ。


「涙、止まったか?」
「あ、うん」


ずびずびと鼻水をすすって返事を返すと、口の周りを塗らした円堂がそっか!と笑う。あーもー喰っちゃいてえ。先ほどまでめそめそ女々しく泣いてたのは一体どこのどいつだろう。男の子はオオカミなのよと昔誰かが説いたらしいが、それはしっかり的を得ている。泣いていたことなどすっかり忘れて、今の俺の目はオオカミの目です。円堂くん逃げて超逃げてー。そんな俺のピンクの思考回路なんてまったくもって円堂は気づいてなくて、くりくりしたまあるい目で俺を見て首を傾ける。そんなかわいい仕草どこで覚えてきたんだよ。


「どうした?風丸」


欲なんて知らない純粋な真っ黒な瞳に少々の罪悪感。でもその真っ黒な瞳にすらむらむら欲情してしまう俺っていったい…。
円堂の瞳をじっと見つめていれば、途端にさっきの円堂の舌の感覚が恋しくなって、あの不埒な顔を見たくなってしまった。もっともっと。


「円堂、俺のこと、すき?」


問いかければ円堂は、少しだけ頬を色付かせた。あーもう、円堂。がまんできなくなって、俺は自分の前髪をぐしゃぐしゃ混ぜた。自分でも気づいてる一種のクセみたいなそれ。


「俺もすき。大好き」
「俺、何も言っ て、な い」



めずらしく歯切れの悪い円堂の言葉。確かに円堂は何も言わなかったが、あんな顔されて嫌いなんて言われても説明つきません。丸出しです。それでもよっぽど恥ずかしかったのか、円堂は俺の肩にぐりぐり頭をすり付けた。少し高い体温が肩から直接伝わる。
ぽんぽんと優しく円堂の背中を撫でると、円堂は「うーっ」と唸った。かわいい。すき。愛情が溢れて止まることなんて知らない。まるで初めからひとつの個体だったかのようにくっつく。もうすきという無限大の宇宙に飲み込まれてしまいそう。何回たっても言い足りねえー。


「風丸、すき」


小さく耳元で呟かれた言葉が宝石みたいにきらきら輝く。がばりとくっついていた円堂を引き剥がして、その顔を見れば、真っ赤な顔を隠しもせずにへらりと笑っていた。溢れるすきの宇宙が喉の奥をぎゅっとさせる。うれしくって今すごく泣きたい。見つめ合って「俺も」と返してそのまま円堂の方に体重をかける。
ベッドが歓迎するようにぎしりと音をたてた。


無限の彼方にひとっとび!
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