今日は雷蔵と私が一緒に生活をしはじめて最初の雷蔵の誕生日だ。そんなわけもあって今夜は雷蔵のすきなものがテーブルに沢山飾られた。我ながら完ッ璧である。ふふん!ケーキは冷蔵庫の中。雷蔵のすきなチョコレートケーキ。あとは主役が帰ってくるだけ!
エプロンのポッケからケータイを取り出してみるとメールが一通来ていた。雷蔵からだな。


今日のご飯なに?


ハテナはかわいい絵文字である。なんか動くやつ。今日の朝、会社に出かける雷蔵に「夜は楽しみにしといてくれよ?」と言ったから、それでなんだか雷蔵もそわそわしているのだろう。かわいいやつめ。


君のすきなやつだよ



っと。私は雷蔵みたいにかわいい動く絵文字なんかは使わない。シンプル イズ ベスト。雷蔵が「三郎のメールは可愛げがないなあ」と呟いていたが、可愛げがなくてけっこう。雷蔵が可愛いければ私はなんでもいいのだ。
そうこうしているうちにまたメールが受信される。雷蔵かな?早いな。


すぎかえる


多分慌てたのだろう。打ち間違えてる。しかも全部ひらがな。よっぽど楽しみにしてくれているらしい。自分の誕生日でもないのに、私はうれしくなる。私の毎日は雷蔵という存在が加わっただけで、きらきら輝くのだ。
かわいい私の恋人。雷蔵。メールを保存してから、最後の準備に取りかかる。




「ただいま!さぶろっ!」


ガチャガチャ鍵を開ける音がしたと思えば乱暴にドアが開いた。おいおい壊すのはさすがに勘弁してくれよ。そんな意地悪なことを思いながらも私の口元はだらしない。雷蔵は走ってきたのか息が上がってるし、前髪も浮いたままだ。かわいい額が丸見え。前髪を直してやりながら「おかえり」と言うと、雷蔵はまた「ただいま」と落ち着いた声色をだした。その声は心地いい。



「んーっ!すごっくおいしいよ!」
「そうか、よかった」


にこにこと笑顔を振り撒きながら、食卓に並んだ料理を食べる雷蔵にほっとする。よかった、喜んでくれて。そんな雷蔵に内心、私もうきうきだ。


「あ、そういえば雷蔵、プレゼントは何がいい?」


思い出したように、雷蔵に尋ねる。実はプレゼントはまだ用意してなかったのだ。時間がなかったと言えばそうだけれど、最もの理由は、雷蔵の絶対に欲しいものを上げたかったのだ。二人で暮らす前もプレゼントは上げていたが、今日は雷蔵にとって、一番、特別な誕生日にしたい。というか、あわよぐば「三郎。プレゼントには三郎がいいよ」と言われたかったのだ。だから、会社に行く前に雷蔵に「夜は楽しみにしといてくれよ?」と言ったのはこういう意味も含めてだったのだけれど…絶対に気づいてないだろうな……雷蔵。


「プレゼント?」
「そう。何でも言ってくれ。今度渡すから」


まあ、そんなところもかわいいのだからいいか。うーんと考え始めた雷蔵を、頬杖を付きながら見つめる。今日という日を雷蔵の中で特別だと思ってくれれば、私はなんでもいいや。たとえあの言葉のいやらしい気持ちに気づいてくれなくても。うーん、やっぱり気づいてくれないのは、少しさみしい気もするが…。


「よし!決めた!」


悩んでいた雷蔵がぱっと私に目を合わせる。なんだか今回は結論を出すのが早いな。前から欲しいと言っていた、本だろうか?それならお安いご用。もっといい物をねだってくれなければ。雷蔵の答えを待っていると、雷蔵がにっこり笑った。いやーかわいいなあ。ん?というか、なんの笑みだ?少し困惑しながら私も雷蔵に微笑み返す。


「僕、プレゼントは三郎がいいな!」


…っ!!!!
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