ボクの女の子

ドレス選び(ヴァイスマンが飛行船に乗ってない完全パラレル)



「白のドレスは小さい頃からの憧れだけど、日本の白無垢も捨てがたいよね!」
「そうだね……」
「でも『神前式』?って正座が難しそうだから、やっぱりドレスかな」
「うん……」
「でもね、ウェディングドレスって白って決まりはないらしいからそっちも気になってるの!」
「もうなんでも良いよー……研究室行っていい?」
「ダメ!」
「えー……」

ボクの一言に、名前は今までのにこにこ顔を一変させてキッと眉をつり上げる。その様子に、ボクはこっそり溜め息を吐いた。

現在ボクらがいる部屋の中は、クローゼットをひっくり返したように色んな白のドレスで溢れ返っている。一言で表すならば、まるで布の海。そんな中に一時間近くもいればいい加減退屈してくるんだけど、退室はどうしても許されないらしい。部屋の隅で待機しているコーディネーターのお姉さんに助けを求める様に視線を送ってみたものの、その人はただにこにこと営業スマイルを浮かべているだけだった。

「アディはどっちが良いと思う?」
「どっちって……」

名前の問いかけに視線を戻すと、眼前には全く見分けがつかないドレスが二着。いや、ちゃんと見ればレースの柄とかが少しづつ違うんだけど、ほとんどが白い布地でできたそれは正直どれも同じに見えた。
でも、キラキラとした目で訴えてくる名前にそうとは言えず、渋々目についた方を指差す。

「こっち……かな」
「こっちかー……確かにこっちも良いんだけど、ちょっと子供っぽくない?」
「じゃぁそっちにする?」
「うーん……でもこっちも可愛いし、アディがこっちが良いなら捨てがたい」

そう言うと、名前は見分けの付かないそれを見比べて、またうんうんと唸り始めた。どうやらボクの選択は間違いだったらしい。彼女の悩む時間を余計長引かせてしまったから。
結局決められず、名前はドレスを抱えてコーディネーターのお姉さんの方へ向かって行く。遠ざかる彼女の背中を見送ってから、ボクはちらかされた白を見渡した。まるで子供部屋みたいなその惨状。年齢だけはもう立派な大人の筈なのに、全く変わらないそのあどけなさに思わず苦笑が漏れた。そしてそれと同時に、そのあどけなさから彼女が今まで大事に守られてきたことを思い知らされる。

今まで大事にされてきた彼女を、今度はボクが守る番。それが、独り占めにするために課せられた義務。
危機感の無い彼女を守るのは正直不安もあるけれど、ボクだけのものにできるならそれも安いものだと思えるんだから、人間って不思議なものだ。













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テーマ「人外ファンタジー」
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