「先生えええええええどうしよおおおおおおお私死ぬかもおおおおおおおおお」


昼飯中、突然汚い叫び声とと共にバシィィンと勢いよろしく保健室の扉が開いた。
何事かと思って扉の方に目を向ければ肩で息をしながら凄い形相のみょうじが立っていた。


「なっ、なんだって…!一体どうしたの!?」


カッッ、と表情筋を強張らせたハデスが早足でみょうじの元へ向かう。


「先生見てこれえええええさっきジャングルジムのてっぺんからジャンプしたら転けたのおおおグロいっ!超グロいっ!見るに耐えないっ!!!っあ!明日葉あああ藤いいい見てこれええええええ」


自分でグロいとか言うなよ、と思ったが、近寄ってくるみょうじの膝を見ると確かに、皮が剥がれて血にまみれている様がグロい。



「だっ、だだ大丈夫みょうじさん!!?っていうか何でジャングルジムからジャンプしたの!?」


「風を感じたかったから」


「(何それ!?)」


「明日葉、こいつがどんな奴か知ってんだろ、聞いても骨折るだけだよほっとけ。つーかお前もいつまで膝見せびらかしてんだよ!人が飯食ってる時にそんなグロいもん見せんなよ!」


「お前言ってる割には今もガツガツ食ってるぞわかってんのか?つーかなまえちゃんも女子なんだからあんま危ねえことすんなって!」


「別にしたくて怪我してるんじゃないよ!ただ己の身を犠牲にしてでも風と友達になりたかったんだナウシカになりたかったんだメーヴェのりたかっただけ!」


「いやなまえちゃんナウシカの見すぎだよ!!」


「…みょうじってやっぱ、マジで変なんだ…」


「あれっイソフラボン君だっ!皆と知り合いだったの?」


「だから礒部ェェェェェ!!」

礒部がこの保健室に来たのは初めてだ。ついでに言うとクラスメイトとは言えちゃんと喋ったのはつい数日前。礒部が俺たちにみょうじのことについて相談に来たのがきっかけだ。何でもこの間の席替えでみょうじの前席になったらしい。今までみょうじの前は美作で、美作も多少迷惑そうにしていた(女子を迷惑がるのはめったにない奴がだ)だけあり、みょうじは授業中でもお構い無く前席を中心に周りにちょっかいを出す。それは「みょうじの近くの席になると授業に集中できない」という定評がつくくらいだ。みょうじへの耐性が全くないにも関わらずがいきなり前後の席になってしまった礒部には同情すらしてしまう。


「ちょっと藤そんな危険生物みたいな言い方しないでよ」


「いや勝手に心読むなよ!どんな能力!?」


「そんな感じの顔してたから」

「どんな顔!?」


「みょうじさん、はいお茶」


「やったーありがとうー!」


治療を終えてみょうじの分の湯飲みを机に置いたハデスに、礒部がビビった。



「…あのーみんな、その子は…?」


おずおず、といった風に手を挙げたのは鏑木だった。ああそういえばこいつみょうじ見るの初めてだっけ。


「ああ、ええと、僕達のクラスメイトのみょうじなまえさんだよ」


明日葉がそう紹介して、次に「みょうじさん、この人は」といいかけた時、みょうじは目を見開いて叫んだ。


「お、女の子がいる!!」


溢れんばかりに開かれた目はらんらんと輝いているようにも見える。


「すっごいねぇぇぇハデス先生怖くないの?でも先生割りと面白い顔してるもんねアハハハハあっさっき明日葉が言ってたけど私みょうじなまえだよ!よろしく!」


「あっ!えっと、私は鏑木真哉、よろしくね、みょうじさん」


「アハハハハなまえでいーよ!というか、噂で知ってるよ!」


「(う、噂…?)なまえちゃんね、分かった!私はシンヤって呼んで。あだ名なの」


「シンヤ!ラジャー!」


若干鏑木がみょうじの勢いに気圧されているが、会話は成り立っているようだ。まあ女子同士だからな。二人とも男子とより話しやすいんだと思う。


「保健室に来てくれる友達っていなかったからとっても嬉しい!良かったら一緒に食べない?」


「「「「げっ」」」」


「うん!ありがとー!」





ステルンベルギア





「じーーーっ」


「…………」


「じーーーっ」


「……な、なんだよお前鏑木と礒部に弁当分けてもらっただろ(つーか効果音声に出してどうすんだ)」


「だって、まだ足りない…」


「(クソ、こいついつもは来ねえのに…)知らねーよ他当たれ」


「わああーんシンヤぁぁあっ藤が意地悪するうううっ」


「なっ!」


「ちょっと藤くん!?なまえちゃんお弁当忘れたんだから少しくらいいいじゃない!」


「俺には関係ねえだろ!そもそもこいついっつも―――」


「おりゃ」


ひゅっ、


バキャッ


「あっ、ちょっとやめてよなまえちゃんっ!やっぱり知ってたのね!」


「ねっ藤!?ねっ藤!?(こっちには返し刃がついてんだぞガハハハハ)」


「〜〜っ!だぁぁクソっ!」


「やったあ!!ありがとシンヤ大好きっ!」


「もう、仕方ないなあ!ふふふ!」


「えへへー」




「…ちゃっかりしすぎだろなまえちゃん」





分かりにくいですがシンヤと仲良くなる回です。多分周りから転校生シンヤについては聞いて知ってたと思う。あと返し刃のこともあらかじめ藤くんが墓穴掘って喋ってると良い。シンヤ(武力)に弱い藤くんとどんどんワルになってくヒロイン´ρ`)