「せのーくーん、数学の宿題やったー?」
「……」
「ちょっ…せのーくん聞いてる!?せのー!
……ぼけー!かす!」
「っせぇな!何なんだよ!喧嘩売ってんのか!」
私の後ろの席で下を向いて黙っていたせのーくんがガバッと顔を上げた。
「せのーくんが無視するからじゃまいか!数学の宿題!おしえて!」
「またかよお前…!ったく俺ぁ姐さんの所行きてぇのに…」
せのーくんは変なとこ真面目だ。授業態度は凄く悪いし、ノートも書かないのに宿題はやってくる。正直よくわからん。しかも地味に頭いい。地味に。ヤンキーなのにね。私にその脳みそ分けてほしいよ全く。
しかもせのーくん女の子苦手だから納豆並みにねばねばしつこくしないとしゃべってくれない。なんでそこまでしてせのーくんと喋るのかって?それはせのーくんが面白いからさ!
「つーかお前その呼び方やめろ!妹尾だ妹尾!」
「せのーでしょ?」
「違う!せ、の、お!」
「せ、の、ー!」
「あああああもう、せ!」
「せ!」
「の!」
「の!」
「お!」
「お!」
「妹尾!」
「せのー!」
「………はあ。もういい…これだから女は…」
せのーくんはため息をついてブツブツ文句を言った後、どこ分かんねんだと聞いてきた。
「あっ、えとねーここの…じゃない!それより先にね!」
「ああ?」
私はそのまま鞄をごそごそして小さな包みを取り出した。ちょびっとだけ、緊張したけどうまく隠す。
「じゃじゃーん!今日はバレンタインデーだよ!女の子達にも恐れられるせのーくんにも私からチョコを差し上げまっす!」
「はあ?な、なんだよいきなりっ」
ほんのり赤くなったせのーくん。今流行りのツンデレだね!
「あ、甘いの嫌いだった?」
「え、いや、そういう訳じゃ…」
「やったーありがとー!ちなみにねそれ本命だよ!」
「ぶっ!」
「汚な!」
せのーくんが吹き出した。なかなか見れないレアショットだこれは!
「な、ななな…」
「私せのーくんすきだよ。ヤンキーだけど優しいし。シンヤ先輩ばかで、いっつも嫉妬しちゃうけどね、ちょびっとだけ」
うはあ私今超大胆!でもやっぱ振られちゃうかな…せのーくん女の子嫌いだし…私のこといつも迷惑そうにしてたし…いやいや、ネガティブなまえちゃんでは駄目だぞ!でもやっぱ苦しいな!貰ってくれたら奇跡なのに…
「だ、だめ…?」
「い、いや…………貰っとく」
「ほ、ほんと!ありがとう!」
嬉しくてはにかんでしまったようふふ!奇跡起きた!
「っ…だーもう!数学やんぞ!お前マジ疲れる…これだから女は…」
「うふふふふ」
「キモい」
家に帰ってから、せのーくんから『チョコ旨かった。ありがとう』てメールが来た。これは、期待していいかな?
→オマケ
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