「…さ…捜したわ…!!」
突然シンヤが表れた。しかもなんか息を切らしている。
「あっちこっち動き回って……置いてくなんてひどいじゃない!!」
「鏑木さん…?」
一体何の話してるのかわからないけど「あっ…!」と言ったアシタバは知っているのだろうか。
あ、もしかして、ハデス先生尾行の件?
「先生っ!!さっきの女性の方……先生にとってどういう方なのかお聞きしてもよろしいでしょうか!」
シンヤそれ聞けるなら尾行するまでもなかったんじゃないのか???
4人でベンチに座り(ちょっときつかった)、先生の話を聞くことにした。
その話によると、三途川さんは、先生が中学時代(中学時代…)、病魔に罹ったことがあるらしい。
「それはもう悩んで苦しんで…心が押しつぶされそうになったけど、でも僕には味方がいた。
ひとりの先生と3人の友人…」
三途川さんはその時の恩人のひとりらしい。ふーん…。
「そっか…それであんなに病魔のことに慣れてる感じだったんだ…」
先生が病魔に罹って以来熱心に研究してくれたりもしたらしい。いい人なんだなー、三途川さん。まあ先生は基本的に人のことけなしたりしなさそうだからいいような解釈してたりするのかもしれないけど、いい人には変わりないんだろう。
「すばらしい先生だったよ」
そう語ったハデス先生に、アシタバが待ったをかけた。
「『先生』?先生が…なんで『先生』?」
キョトンとしたアシタバに、先生もキョトンとした表情で返した。
「なんでって……三途川先生は僕の恩師だけど何か……」
「「「ウソぉ!!?」」」
私達の気持ちが揃った瞬間だった。恩人ってそっちかよ!!ま、まさかハデス先生より年上だとは……。
三途川さん、しかも10年以上前から見た目年齢が変わらないらしいい…いや、おかしいおかしい。「女性は不思議」とか、そういう次元じゃない。
シンヤは空手の稽古…ではなくピアノのレッスンがあるらしくもう帰るらしい。
「あっ、私も晩ご飯の用意全然してない!!」
青くなりながら席を立つ。
「そういえば莉沙、夕飯作るから今日は無理だって言ってたわね」
「僕が無理に引き止めちゃったんだ、ごめんね藍田さん…」
「いいわよもう終わっちゃったことだし…でも今度ジュース奢ってよね、それじゃ」
シンヤに途中まで一緒に行こうと言いながら帰ろうとすると、ハデス先生が送って行こうかと言い出した。さすがに道場までついて来られるのはまずいのでシンヤが全力で断る。
ああもう、今日は疲れた。
「今日はごめんね、誘ってもらったの断っといて」
「いいのよ、仕方ないし、あんまり良いことに誘った訳じゃないし」
シンヤいい子で良かった。
シンヤと別れて一人で夕闇の中を歩く。
ハデス先生も病魔に罹ったことがあるんだなあ…。もしかして、今の髪とか肌とか、あとあの手がひび割れて病魔を「食べる」能力とか、その時の病魔と何か関係でもあるのかな。
「…ま、いいか」
早く帰って夕飯作らないとお母さん帰って来ちゃう。
次の日、美作が「アシタバとシンヤがデートした」とか喚いてたけど何だったんだろう。
end.
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