ハデス先生の保健室に通うようになってから(主に貧血や体力切れ)気付いたことだけど、先生の淹れてくれるお茶は、始めこそ胡散臭そうで遠慮してたけど、飲んでみると凄く美味しかった。


日本茶の香ばしさと、少し生姜の味がして、時間が経っても身体が温かい。

家で試してみたいなと、1度先生に淹れ方を聞いたら『ヒミツ』と返されたことがある。



私は先生のお茶と、お茶請け代わりにと出してくれた柿でまったりしていると、4限目の終了を報せるチャイムが保健室に、学校中に響いた。



「もうお昼休みみたいだね…藍田さんはどうする?」


「そうですねー、もう大分楽ですし、弁当も教室なんで、一旦もどりますねー」


「そう……寂しくなるなあ…もうちょっと居ないかい?担任の先生には上手く言っておくから。ね?」



私が(いや多分保健室から出ていく人全員)教室に戻ろうとすると、先生はいつもこうやって引き留める。


それが駄々をこねる子供のようで、私はやっぱりいつも笑ってしまうのだ。


「…じゃあ、とりあえず弁当だけ、取ってきますね」



そう言って、私がソファーから立ち上がると同時に保健室のドアが開いた。



「おーいサリーちゃーん!!弁当持って来たぜー!」

「みっ、美作くん!もうちょっと静かにした方が…」

「お前はマジでどんだけ倒れりゃ気が済むんだよ」


「皆して…どうしたの?」



現れたのはアシタバに美作、んで藤。



「勿論サリーちゃんの見舞いよ!」


「昼飯食いに」


「お前それ本気で言ってたのかよ!」



美作と藤がベチャクチャと言い争う最中、アシタバが近寄ってきて「藍田さん…大丈夫?」と聞いてきた。
こいつも心配性だなーと、つくづく思う。



アシタバにはこの台詞を何度吐かれたことか。
私が倒れるたび――――週に1度は当たり前なのに―――アシタバは飽きもせず大丈夫?と問う。正直なところそこまでいちいち聞いてくれなくても、と思う。


…でもそれがアシタバの優しさだと考えると、無理に拒絶もできない。


「まあ馴れてるしねー、癖みたいなもんだから心配しなくて大丈夫だから、ありがとう」


「く、癖って…」


苦笑するアシタバから離れ、美作から弁当を受け取りソファーへと戻る。

他3人もここで昼を食べるらしい。
これを見ていたハデス先生、手で目を覆ったと思ったら、涙声で、






「…うう……みんな……こんなに……」


















……良かったね、ハデス先生。



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