今日は席替えがありました!私の席は窓際の、前から4番目。大のお友達である雪ちゃんとは離れちゃったけど、風が気持ち良くって素敵な席。前はお友達のアシタバくんが座っている。とても優しくて、気が利いて、雪ちゃんと美作くんは「地味メン」だなんて言っていたけれど、そんなことはないと思う。アシタバくんは素敵な男の子だよ、2人とも!


そして、私の右隣は、安田貢広くん。安田くんとはあんまりお喋りしたことがなかったけど、雪ちゃんが「AKYのなんとかなんとか熱子ファンのアイドルオタクで常に女の裸のことしか考えてないようなキモ男よ」なんて言っていた。

う、うーん、雪ちゃんの言うこと(特に他の人のこと)は、ちょっと言い過ぎな時があるからなあ…。あ、でもこの間「熱子ォォォオオ」っておっきな声で叫んでたから、その、熱子さん?のことは好きなんだと思う。あと、そんなお話したことないのにこんなこと言うのは悪いことかもしれないけど、ちょ、ちょっぴり顔が怖くて、苦手……です。
だから、隣同士はちょっと気まずい。で、でも私が勝手にいってることだから…あっ!消しゴム落としちゃった。

先生のお話聞いてなかったののバチがあたっちゃったのかな…ううう。

席から下を覗いて消しゴムをさがすと、割りと簡単に見つかった…けど、安田くんの席の下にある!ど、どうしよう!

すると、安田くんは私の視線に気付いて下を見て、消しゴムを拾ってくれた。

「あ、あの……けしごむっ」

「ああ、これ、苗字の?」

「うんっ」

すると安田くんは、消しゴムを手渡してくれた。両手で受け取ると、「もう落とすんじゃねーぞ」ってにかっと笑ってくれた。あれ、雪ちゃん、安田くん、そんなに悪い人じゃないよ!





休み時間、雪ちゃんにそのことを伝えると、消しゴム拾われたくらいでどうのこうの…と言われてしまった。

「でもね雪ちゃん」

「何よ」

「安田くんの笑った顔、にかって、太陽みたいだったよ!私胸がシューってなって、ぽかぽかしたの!悪い人じゃないと思う!」

すると雪ちゃん、おおきな目をもっと開いた。

「な……あ、あんた、」

「なあに?」


「わ、私は絶対反対だからね!あんなエロリスト!」


消しゴムが誘う



「何!?オレのこと呼んだ!?」

「わっ、や、安田くん!」

「ちょ、近寄んな安田貢エロ!」

「なんだそれは誉め言葉ととっていいんだよな!」

「や、安田くんっ、さっき消しゴム拾ってくれてありがとう!」

「おう!」

(知らぬうちに始まる恋心)



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