朝起きたら床にバラバラに壊れた目覚まし時計が6時半を示して転がっていた。


「………あれ」


何で時計壊れてんの、とか、いつもはベッドの上に置いてるのになんで床に、とか、色々考えて、これで5代目になる目覚まし時計はそのままに、机に置いてある携帯を手に取った。





「………うそ、」











ガシャガシャガシャガシャ



「遅刻ぅぅぅぅ!」



私が起きたのは6時半なんかではなく、何時もなら家を出ていておかしくはない時間だった。お母さんに何で起こしてくれなかったのと聞くと「気持ち良さそうに寝てたから」とかほざきやがった。気持ち良さそうって当たり前だろ気持ちよかったわ寝てたんだからあああ!



ガシャガシャガシャガシャ


誰にあてることも出来ない怒りを自転車を漕ぐエネルギーに変える。

携帯で時間を確認すると予鈴まであと5分しかない。それでもダッシュで漕げば間に合――…


「うがっ!」


突然自転車が止まった。前輪が浮いて、体が投げ飛ばされそうになる。くっ、これが慣性の法則か…!ってそうじゃなくて


「何…!」


後ろを睨み付けると、自転車の後ろの荷台を同じ高校の制服を着た男子が掴んでいた。


「?、誰……って、浅羽じゃん」


「おはようございます」


「あ、おはようございます」


私の自転車を捕まえたのは同じクラスの浅羽祐希だった。
っていうか、


「…どうしたの?私急いでるんだけど」


こんな時間にいるってことは、浅羽も寝坊かなあと思ったけど、生憎私は彼を心配する余裕はない。そんなに話したこともないし。



「後ろ乗っけてくれませんか」

「はあ!?何言ってんのいきなり」


「今俺ピンチなんです。遅刻しそうなんです」


「それは何となくわかるけど!私だって遅刻しそうなのピンチなの!浅羽に構ってる暇はない!」


「俺今日も遅刻したら悠太に叱られる…!」


「知らんんんん!」


悠太、とはこいつの双子の兄である。兄弟揃って美形なので何分名の知れた双子だ。
しかし今それは関係ない。浅羽を無視して無理矢理漕ごうとすると、向こうも負けじと引っ張って、ずるずる。思い通りに進まない。


「離してえええ!」


「無理です…!」


「つーか、その兄貴は!?」


「日直…」


「くそおおお」


「ちょ、ほんとに今日だけ…!スーパーマン苗字さん!」


「そのスーパーマンって持ち上げてる!?馬鹿にしてない!?」


道行く人々が純白の視線を投げ掛けてくるが、私達の目には入らない。尚も続く私と浅羽の攻防に、折れたのは私だった。






君のスーパーマン







「お、重…っ!男子重っ!」


「頑張ってえ〜スーパーマン〜」


「きしょい!あとスーパーマンムカつく!
つーか普通君が前でしょ!時間ないのにいいい!」


「俺紳士的な男だから」


「レディファーストってか!初めて聞いたよこんな女性に厳しいレディファースト!」


キーンコーンカーンコーン


「「あ、チャイム」」