「ねぇ、どうして泣いているんだい?」
――うるせえ。
「鬼の目にも涙っていうのはこのことを言うのかな。ねぇ教えてよ…何故君は泣いてるの?」
――うるせえっつってんだろ。
「うるせえうるせえって馬鹿の一つ覚えみたいにそれしか言わないね。しかも鼻声だから迫力もない」
――頼むから、黙れよ…!
「…クク、アハハハハ!まさかこんなシズちゃんを見れる日が来ようとは!俺という存在はやはり運命に愛されているのかもしれないねえ!」
――黙れって…言ってんだろうがあああっ!!
「また、繰り返すつもり?」
――…!!
「湧き出る怒りを抑えられず、暴れて暴れて暴れまくって、最終的に残るものは何もない。あるものは殴った感触と…心の痛みかな?ははは」
――……やめろ。
「それでも今まで一人も殺ってないんだから不思議だよねぇ。無意識にセーブしてんの?…は、有り得ないか」
――やめてくれよ…!
「愛されたいかい、シズちゃん?」
――な、に…?
「恐らく十中八九このままだったら、君は誰にも愛されないだろうね。俺としてはどうでもいいし、むしろ悦ばしい限りだけれど…これじゃシズちゃんが余りにも可哀相だ」
――お、れは…!俺は!
「今の君なら、愛してやってもいい」
差し伸べられた手に反し、深紅の瞳は侮蔑にまみれて、汚いものでも見るかのように俺を見下していた。
そこに映る己の姿は、弱くて、情けなくて、今にも崩れ落ちてしまいそうで。
この手を取ってしまえば積み上げてきたもの、守り続けてきたものが、音を立てて崩れてしまうと分かっていても。
荒んだ心をほんの少し癒すには、充分な温かさだった。
fin.
自己嫌悪に陥ったシズちゃんとそこにつけこむ臨也。イザシズです。