※サイケと津軽はPCや携帯の中にいるアバター。ですが普通に人間と会話してます。臨也と静雄とは全くの別人格です。これらの設定を許せる方はどうぞ。 「いーざーやー!あそんでよー!」 「無理。今忙しいの」 「あそんであそんであそんであーそーんーでー!」 「うるさいなぁ。我が儘言ってるとお前のこと消すよ」 「じゃあ、つがると遊ぶからいーですぅー」 「ちょっと待て。津軽ってシズちゃんとこにいるアバターだよね?なんでいつの間にそんな仲良くなってんの?」 「へへーん。ないしょ!」 人差し指を立てながらくるくると楽しそうに踊り回る姿を見て、ため息が零れそうになる。俺とは正反対の全体的に白とほんの少しのピンクを基調としたスタイル、整った顔立ち(そっくりなのはここだけだ)、ヘッドフォンを耳に付けて俺のPCや携帯を自由自在に行き来している存在。 いくらネット上の分身であっても、俺とは全く似ても似つかない性格であるそれは周囲から『サイケ臨也』と呼ばれており、最近は何故だか現実に存在する折原臨也より慕われているような気がする。 ま、そこは別にどうでもいいけど。 「だめ。津軽と遊ぶの禁止」 「えーっ!?なんでよ意味わかんない!」 「分かんなくてもいい。とにかく駄目」 「なにそれ横暴すぎ…自分がしずおと上手くいかないからってさぁ」 「さよならサイケ。君と過ごした日々は三日で忘れてあげよう」 「ごめんなさいー!」 じたばたと暴れるサイケをゴミ箱のファイルまでつまんで持っていくと、机に置いてあった携帯が震えた。 それと同時に「あっ!」とサイケが嬉しそうに叫ぶのを見て、まさかと思い携帯を開くと画面には憎たらしいあいつと同じ顔をしてぷかぷかとキセルを吸っている津軽がそこにはいた。 久し振りだな臨也、と声までそっくりなもんだから適わない。 「つがるぅ!あいたかったあ!」 「お、サイケ」 いつの間に携帯へと移動したのか、津軽の胸に飛び込むようにして抱きつくサイケと嫌がる素振りも見せず当たり前だとでも言うように腕を伸ばして綻んだ顔をする津軽に人の携帯でいちゃつくなよと思い「で、何の用だい?津軽」と声を掛けて二人の逢瀬の邪魔をした。 「静雄からのメールを持ってきた」 「あー…消していいや」 「いいのか?」 「だってどうせ『死ね』とか『消えろ』とかだよ。良くて空メだし」 消して、と再度促せば腑に落ちない表情を此方に向けて「…わかった」と了承し、手に持っていたメールを消してくれた。 主人より物分かりが良いアバターを持ってシズちゃんは幸せ者だよ本当に。 「いざやは今しずおとケンカ中だもんねー」 「余計なこと言うなよ」 「ああ、だから静雄の奴あんなに苛ついていたんだな」 津軽の発言にどうやら悩みの原因である恋人はまだ怒っているらしいことが分かり、嘆息する。 いつもの喧嘩なら殴り合ってお互い疲れ果てて最終的にはベッドに入っていつの間にかはい仲直りというルートを辿るのだけれど、今回ばかりは少し面倒くさい。 (…シズちゃんの、ばーか) 原因は、両方にあった。 けれどいつまでたっても成長しない俺達はどちらかが折れるまで、ずっと意地を張り続けてしまう。 こんな関係にしたい訳ではない。 本当は、もっと。 「ん、ちょっと待て」 「つがる!どこいくのー!?」 「…もしかしたら」 携帯の中で津軽とサイケの掛け合いが聞こえるが、そんな二人に口を挟むこともせず俺は机に突っ伏している。 最後に会った彼を思い出すだけで腸が煮えくり返るような怒りに呑まれそうになるが、同時に胸が痛くなる程切なくなる。 分かってるんだ。 本当はこんなにも今すぐ会いたくて仕方ないと思ってる自分がいることを。 分かってるんだ。 画面の向こうで素直にお互いを求め合う二人のようになりたいと願ってやまない自分がいることを。 分かっては、いるんだ。 「おい、臨也」 「…なに」 「静雄からメールだぞ」 「…は?」 津軽の一声に頭が追い付かないまま、次はちゃんと読んでやれよ、と強制的にメールの表示画面に切り替えられてしまい、嫌でもそこに綴られていた文字の羅列が目に入ってしまった。 それを見た瞬間、なんで連続してメールなんて送ってきたんだとか、こんなこと言うならメールじゃなくて直接口で言えよとか、疑問や焦燥が溢れ出ていたものが一気に消し飛び、すぐさま立ち上がって手元に置いといたコートを羽織る。 勢いが良すぎたのか、立ち上がる際に椅子が倒れてしまったが構わない。 一刻も早く。 「い、いざや!?」 「ちょっと行ってくるから、二人ともPCの方に移動して」 「え、あ、うん……しずおのとこ?」 「…サイケは俺と違って頭が悪いのに、そういうとこのカンはやけに良いから困るんだよねぇ」 「わかるよ」 だってオレはいざやだもん! にっこりと天真爛漫の笑顔を見せるサイケの言葉に思わず目を丸くしてしまったが、それもあながち間違ってはいないのかなと思い、そうだねと笑い返した。 「サイケのそういう素直なとこ、好きだよ」 「!」 「だから俺も見習わなきゃいけないね」 シンプルに四文字の言葉で治められたメール画面をもう一度見直し、こっそり保護をして閉じる。 きっと口では恥ずかしくて言えないから、こういう形で俺に伝えたかったんだと思う。 それなら顔を見たら言ってやろうじゃないか。 『会いたい』なんてこっちの台詞だ、ってね。 「…つがる」 「ん?」 「いざやがオレにはじめて『すき』って言ってくれた」 「良かったな」 「う、うれしいよぅ…!オレばっかりがすきだと思ってたから…!」 「よしよし」 「いまなら画面からでられそうなきがする!」 「それは無理だろ」 「あ、つがるのこともすきだからね!」 「…俺は大好きなんだけど」 「…!お、おれもほんとはすきじゃなくてだいすき!つがるだいすき!」 fin. 色んなサイト様で見掛けるサイケと津軽が可愛くてつい…。 にしてもうちのサイケは頭が弱いですね。 津軽はシズちゃんよりもあまり感情の起伏が激しくないという妄想。 |