シズちゃんは、本当は優しい。

そんなこと、出逢った時から知ってる。

暴力が嫌いだと言う彼は、その圧倒的な力を抑える術を知らずに只々拳を振るい、破壊をひたすら繰り返す。

傷つけ、傷つけられて、また傷つけて。

裏で色々と仕組んでいた俺は愉しい気分で毎日その光景を見ていたし、そしてその後に必ず俺の方へと拳が向けられるから、それが何だか愉快だった。

操っている感じがして。

ま、中々思い通りにいかない事の方が多かったけどね。

そんなある日、いつものように俺は暴れる彼を遠目から眺めていたわけなんだけど、その日は少し違っていた。

動きが異様に鈍いんだよ。

笑えるくらいに。

最初は目を疑ったさ、どんどん傷が増えてくシズちゃんを見て、苛立ちさえ覚えていった。

俺の優秀な駒が何をやってるんだ、ってね。

だってそうだろ?

キングは何よりも、誰よりも強く在るべきなんだ。


なのに、あんな泣きそうな顔で人を傷つけて。


本当に矛盾してる。気分悪い。


俺の時には絶対見せない顔だったから、余計に。


結局何が言いたかったのかって言うとそれこそ冒頭に戻るんだけど。


シズちゃんは、優しいんだ。

善良的な優しさでも、ましてや偽善的な優しさでもない。

彼なりの優しさで、傷つけぬよう、傷つけられぬよう、また傷つけぬようにね。

反吐が出そうで俺は嫌いだけど、それに救われてるモノ好きもいるみたいだから大したもんだよ。


俺達は絶対に互いを互いに相容れない存在として今まで生きてきた。


人間を愛す俺と人間に愛されたい彼。


でも、だからこそ。

だからこそ、時折思う。


それはある意味で、必要不可欠な存在でも、あるんじゃないかって。



fin.


臨也一人語り。
なにが書きたかったなんて私が訊きたいですほんと。


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