※欲望に隷従の続き
※志摩兄弟スパイラル
「兄ちゃんまだイってないんやけど?」
そう言い放った金造が廉造の太股を引き寄せると、性器は再び奥へとめり込んでくる。
「あ、く、うっ……」
絶頂を迎えた後、というのも手伝いビクビクと腰やら太ももやらが震えているのを感じながら床に爪を立てればガリッと嫌な音がした。不用意に伸ばされていた爪が折れたかもしれないなどと欲にまみれた頭で考える。
「廉造んなか、えろう気持ちええわぁ……さっきよりもしまっとるし」
が、そんな事はお構い無しに性器を抜き差しする金造。グチュグチュと響くその音は嫌でも羞恥心を掻き立ててやれば面白いほどに廉造の身体は跳ねた。
「あぁっ、うう、ふ、んう、ううっ」
とはいえ、的確に善いところを攻め続けるので、そのあまりの快楽に指をかみ締め悶えれば、金造も唇をかみ締めて腰の動きを速める。そうして部屋には淫らな水音と、押し殺された喘ぎ、徐々に速まる肉と肉のぶつかる音が溢れ、それらに酔っていた二人は知らなかったのだ。
一つの足音が、この愛の揺りかごへと向かっているということに。
「あう、ふ……んう、う、ふう、うあぁ」
けれども断続的に廉造の唇から漏れる音に思いを馳せては腰を動かすから、
「お前ら何やっとんのや」
結局ガタッと襖が開け放たれるまで二人は全く気が付かなかったのだ、次男の訪問を。
「うえ、柔、に……?」
「うお、柔兄……!?」
「なぁんや、えらいエエ事しとるやんけ」
にやり、と歪んだ笑みを浮かべた彼。その姿に、金造と廉造は揃って冷や汗を流す。そのくせ一度火を灯した身体は火照りっぱなしで、ドクドクと息づいているのだ。
柔造はゆっくりと部屋に入り、後ろ手で襖を閉める。そしていつもは面倒見の良い表情を浮かべているそこに、どろりとした何かを介入させた、彼らしくない笑みを浮かべていたのだ。
「兄ちゃんも混ぜてな」
それは金造にとっては最初の、廉造にとっては二度目の死刑宣告だったといえる。
呆然としている二人などお構いなしに二人の背後に回った柔造。
「うああっ」
そして、甚平で隠れていた金造の臀部に――正確には秘部にだが――指を突きつけたのだ。
驚きと、そして逃避するために前かがみになる金造。そこに待ち受けていたのは廉造の秘部である。
「ひぃあっ」
突然の動きに身体が驚きギュウッと金造の性器を締め付けながらドクドクと精液を吐き出したのだ。そして廉造のあまりの締め付けにまた金造が呻く。
そのサイクルを面白そうに見ていた柔造は人知れずペロリと唇を舐めた。
そして突きつけるだけではなく、今度は無遠慮に金造の中へと指をめり込ませていったのだ。
「ひっ、いあ、いっ」
近頃は全く受け入れるほうをやっていなかった金造のそこは硬く閉じているというのに、何の潤滑油もなく無理やり拓かれているのだからたまらない。
苦悶し眉根を寄せる金造の上体は完全に廉造へと重なった。
「ふ、あっ」
それによって抉られる場所が変わったのか身体をうねらせる廉造。
二ヶ所を違った方面から攻め立てられ、金造は困惑していた。後ろから感じる確かな痛みを塗り替えるかのように前から目の眩むような快楽が押し寄せてくる。金造は完全に混乱していた。
そうして遂に苦しみが快楽に負けようかという瀬戸際で不意に苦しみを与え続けていた指が腸壁に刺激を与えながら抜けていくのを感じた。
「あっ、う、……くっ……」
「んっ、出てっ……んぅ……」
そうすることにより完全に快楽だけとなった刺激は的確に金造を上り詰めさせ、廉造の中へと本日二回目の精を放ったのだ。
精液が流れ込む感覚に酔いしれている廉造の首筋へと吸い付き一つの痕をつける。このタイミングで痕を付けるのは、最早金造の習慣のようなものであり、廉造も好きなようにしろとその身を投げ出すのだ。
と、その時後ろからガサリと不穏な音が聞こえてきた。
そこで金造は思い出したのだ。絶頂の気持ちよさにすっかり忘れていたが、背後には兄、柔造が居るのだと言うことを。
「入れんで、金造」
秘部の入り口にグリッと性器を押し付けながらそう宣言した柔造に一気に身体中の筋を硬直させる。
以前受け入れたことのある廉造の発育途中の性器とは比べものにならないくらいに熱いものに全ての意識を持っていかれる。
そして、次の瞬間、身体が真っ二つに裂かれるかのような痛みと共にそれが体内へと入り込んできたのだ。
「いっつああ!痛い、ほんま、痛いっ」
「ぎぇえっ!ちょお、金兄!噛まんとってや、痛い!」
その痛みに耐えようとすれば、無意識に肩へと歯を立ててしまっていたらしい。
「金造、廉造がえろう痛がっとるさかい早よ離れたり。」
「かんに、ううっ、ぐ、ふうっ」
慌てて謝るが、その間にも切っ先は奥へ奥へと侵入を続け、口からは呻き声が漏れる。そして金造が伸ばした指が廉造の腰に食い込むたび、ビクッと身体が跳ねた。
「ふぅん、廉造は痛いんが好きなんやなぁ」
「んっ、ひ、ちゃ、うっ……ひぁあっ」
と、その言葉のすぐ後に柔造の指が金造を通り越し、廉造の乳首に触れるとその声はより一層艶を増し、歓喜に身を震わせたのだ。
「うあっ、れんぞ、動、くな」
しかしその悦びを柔造へと中継するのは金造である。ほんの少しの快楽だって、金造の痛みを快楽へと変換するには充分だった。
「金造ん中、うねり始めとるわ。」
「んなわけっ、いっああああ!」
そしてギチギチと柔造を締め付けていたそこが緩んだ一瞬を見計らって、性器は完全に胎内へと納まったのである。
「きんに、今日、ペース早、い、んっ」
その衝撃に耐えきれず、三度目の精が廉造へと注がれた。そこは金造の吐き出したものでいっぱいになり、少しでも性器を動かせばたちまち漏れてしまいそうな程である。
「何や、イったんかいな。耐え性ないやっちゃなぁ」
後ろからは金造を詰るような柔造の意地の悪い笑い声が聞こえてきて、羞恥に顔を赤らめるほか無かった。
「ほな、動くえ?」
そして柔造はそう言うと、廉造の乳首を弄っていた手を金造の腰へと移し、ガッシリと掴むと、無遠慮に腰をグラインドさせ始めたのだ。
「あっ、待って、まだ、むり、や、んんんっ」
「ふぁ、ややぁっ、ちょお、焦らさんとって!」
その事により、廉造へも衝撃が行くらしい。とは言え金造が直接動いているわけでは無い為、与えられる刺激は酷くもどかしく、いやいやと頭を振る。
その姿に気を良くした柔造は、金造を揺さぶる力を強めた。
「ひぁっ、やっ、激し、いっ」
「ん、あっ、ええ、よぉっ、」
と、どうやら快楽を感じ始めたらしい金造の声は甘さを含み、呻きではないれっきとした嬌声が二つ部屋に響いたのだ。
「二人とも、えっらい気持ち良さそうな声出すやないか」
柔造は折り重なった二つの肢体を眺めながらほくそ笑む。
そして、ラストスパートをかけるかの如く抜き刺しを早めると、金造の最奥へと向けて精液を叩きつけたのだ。
「あっ、ああっ、あっ……で、とる……」
奥に感じる暖かな精液に太股を震わせる金造。
「金兄は出さへんの?」
そして、中に確かな質量を感じながら問いかけた廉造にそう言われるまで、中に出された感覚に酔っていたのだ。
廉造の不満そうな声に雄としての自分を思い出す。そして柔造が抜け出す前に、緩やかながら腰を動かし始めた。のだが、上手くいかない。あまりに受け入れるのが久々であった為か、足腰が立たなくなってしまっていたのだ。ついでに後ろに受け入れたままであった性器が擦れてまた感じてしまう。
これでは完全にいたちごっこではないか。
それに気がついたのは、後方に居た柔造が再び金造を突き始め、廉造が自分の良いように腰をうねらせているときであった。
「んあ、は、んんんっ、」
気持ちよさそうな声が響く。けれどもその声が自分から発されているものなのか、それとも腰を振ってよがっている廉造から発されているものなのか、もう判断する事は出来なかった。
気持ちいい、そんな言葉が頭に浮かんでは、消える。
もうなんでもいい。この快楽がずっと続けばいい、なんて思いながら廉造の腰を掴みなおせば、中がキュッと閉まった気がした。
快楽に隷従2
111002