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※メイキングで使用した小説
※短いうえにもっさり残念


ぎゅっと握り込む手が汗ばんで来ている事を知っている。知っているけれど、廉造はその前から動く事が出来なかったのだ。

「志摩?どないしてん」

ぐぐぐ、と目の前のそれとにらめっこをかましていると、明らかに不信そうな表情を浮かべた勝呂が問いかけてきた。そして、廉造の視線の先――ファミレスのショーウインドーの中にある、一番奥で光っている甘そうなクリームをたっぷりと乗っけた所謂パフェと呼ばれる代物――を確認すると、ふ、と笑う。

「む、笑わんとってくださいよぉ」

それへ敏感に反応したのは廉造で、甘味なんてものに惹かれるのはやはりおかしいのかと少し恥じながらもそっぽを向き、しかしそれでも甘味の前からは動けないのは身体がそむくことを受け付けていないからか。

「すまんな、ここにするか?」

そんな廉造に必死に笑いを堪えていると言いたげな表情を向けた勝呂の提案に、廉造は首を振って見せた。

「別にここやなくてもええです。坊はもっとトンカツとかそういったガッツリ系の方がえんですやろ?」

そしていかにも育ち盛りが好みそうなメニューを上げる。
このまま自分の意思とは違った場所へと勝呂を向かわせようという作戦なのだろう。
そんな廉造に、いつだってこいつはそうだと内心で勝呂はゴチた。

「あー、今はトンカツってよりも久しぶりにス、スパゲッティーでも食いたい気分やねん。」

自分の意見は二の次で、勝呂や今は居ない子猫丸の意見を必ず通そうとする。例えその意見が廉造の意見と真逆であっても、そこに意思なんてはじめから無かったような態度で、ほなそうしましょうか、なんていうのだ。
そんな廉造が好きだと思う。愛しいと思う。しかし、だからこそ、自分の前ではそのように上下関係を匂わせるような態度をとって欲しくない。
例えそれが、無意識であったとしても。

「ブフォ!あ、あかんえ……坊…ふっ、…その顔で…くくっ…スパゲッティーて……!!おもろすぎます……!!」

思いっきり噴出した廉造は握り締めていた手で頬を伝った涙を拭う。どうやら笑いすぎて涙が出たらしい。

「笑うなや。俺かてイタリアンとか食べたいときもあんねん。」

そういう勝呂に廉造は再度笑うとその手を取った。

「坊がどうしても、ていうんやったら。しゃあないですわ。行きましょ?」そういう廉造の目は酷く輝いていて、こんな表情も出来るんじゃないかと勝呂は微笑んだのだ。



110807





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